見事に優勝した交流戦で首位に立ち、2位阪神に3.5ゲーム差をつけて後半戦を迎えた巨人。順風満帆のはずが、夏の甲子園大会が始まり“死のロード”に出た阪神に、あっという間に追いつかれてしまった。おかげで慌ただしさを増したのが、次期巨人監督が約束されている松井秀喜氏の周辺だ。
ニューヨークに滞在している松井氏は8月23日、ヤンキースでワールドシリーズを4度制したジョー・トーリ前監督の背番号6を永久欠番とする記念式典に出席した後、秋以降の予定を白紙に戻したという。
「長嶋茂雄終身名誉監督が『帰ってこい』の指令を出し、秋季キャンプでの臨時コーチをあらためて要請したからです。日本球界を離れて米国で静観していた松井氏も、後輩の星陵高校ナインが石川県大会の決勝で9回に8点差を逆転し、サヨナラ勝ちしたことが全米でも話題となり、野球の虫が騒ぎだした。心境が変わり、巨人のユニホームを着る準備を進めているようなのです」(ベテラン巨人担当記者)
巨人の急失速は、阿部をはじめとする主力の不振や故障によるものだが、巨人上層部の不穏な動きも見逃せない。いや、こちらの方がGナインを迷走させているといった方がいい。
巨人は今年6月、読売新聞グループ本社の株主総会を前に球団人事を一新した。渡辺恒雄球団会長が球団最高顧問に退き、後任に桃井恒和球団社長が就いた。新たな球団社長には久保博読売新聞東京本社常務取締役事業局長が抜てきされ、就任の席で新球団社長は「アメリカでの自己研鑽の時期は終わった。時期が合えば希望したい」と松井氏に真正面から復帰オーダーを発信したのである。
「ナベツネさん自らが一歩退いた形の今回の人事に対し、高齢に伴う健康面という理由を前面に出していましたが、真の狙いは松井政権を一気に進めることにある。自分がトップにいては原監督に遠慮があり、肩をたたくのは難しい。そこで新社長にその役を、というわけです」(巨人関係者)
さすがの球界のドンも御年88歳。松井氏の監督就任を余裕で待てる時間はない。それは松井氏の師匠でもある長嶋茂雄氏も同じ。巨人が優勝を逃せば、それを機に監督交代というわけだ。