こうした動きに対し、電力会社の関係者は怒りを隠さない。
「太陽光の発電コストは当時でも30円を切っていたし、最新のシステムを駆使すれば20円を切ることも可能だった。国民負担を考えれば、いくら何でも丸呑みはなかった。孫社長は、民主党政権にそれだけの影響力があったのです」
ところが、昨年末の政権交代によって、孫社長の皮算用に狂いが生じてきたというのだ。
「実は、再生可能エネルギーの電力買い取り価格は、毎年度ごとに見直されることになっていたんです。今回、茂木経産相がぶち上げた買い取り価格引き下げ発言は『もう、あなたたちにおいしい汁は吸わせない』との最後通告と理解すれば話は早い」と永田町関係者は指摘する。
「問題は、新年度から買い取り価格を下げても、去年契約した42円は継続されることですが、実はこれにも抜け穴がある。電気の安定供給に支障が生じる恐れがある場合などは、買い取りを拒否できるのです。太陽光発電は天候に左右されるし、太陽の角度で出力が変化する。しかも小規模な発電が多く、コントロールに苦労するから電力会社は『煩雑な太陽光は買いたくない』が本音。知恵者揃いの各社が、目障りなソフトバンク排除でタッグを組んだら、いくら強気の孫さんでも悲鳴を上げますよ」
また、「茂木経産相の発言の真意は、原発復活に向けた地ならしが目的ではないか」という極めて現実的な観測も浮上している。
電力会社の買い取り価格を引き下げれば、ビジネス妙味に欠けることから参入業者は減少する。これで来年、再来年と価格を下げれば、もうソーラービジネスは成り立たない。といって経済活動や社会生活を守るために電力不足を放置しておけるわけがなく、今は“反原発”を唱える闘士の間からも「やはり原発が必要ではないか」と寝返る者が続出しないとも限らない。
「それこそが究極の狙いでしょう。毎月の電気料金に上乗せしている負担がゼロになるなら、国民の理解も得やすい。いかにも電力村の住人が考えそうなシナリオですね」(前出の永田町関係者)
政商と揶揄された面々の行く末はともかく、明るい未来を照らすと思われた太陽光ビジネスが、政界の思惑に翻弄されているとは皮肉なものである。