主人公を演じるチャーリー・ハナムは、マックイーンほどのギラギラ感はないものの、クールな格好よさが魅力。親友のドガ役はむしろ新作のラミ・マレックの方がハマっているのでは、と思うほどの出来でした。さすが、フレディ・マーキュリーの激似演技でアカデミー賞の主演男優賞を受賞するだけはある表現力です(実は『ボヘミアン・ラプソディ』は未見なのですが)。
パンフレットの解説によると、本作の監督は、リメークを意識しないために、オリジナル版を撮影が半分すぎるまで見直さなかったようです。監督は、単なるネバーギブアップの脱獄映画ではなく、自分自身と自分の過去から脱出しようとしている男の物語として描き直したかったのだとか。
欲を言えば、脱獄のノウハウや、2年プラス5年の独房生活をどうやって発狂せずに耐え抜くことができたのか、もう少し、ねちっこく伝えてほしかったですけどね。
でも、フランス史上最悪と言われる流刑地の環境の劣悪ぶり、南米にあるフランス領ギアナの熱帯らしい空気感は、改めてゾッとするほどよく描けていました。
冒頭にも書きましたが、パピヨンが流されたサン・ジョセフ島、悪魔島はもちろん、逃走経路に使われたカリブ海に面した国々の街を、自分は何度かに分けて、しらみつぶしに訪ねました。
信じられないことに、サン・ジョセフ島なんてパピヨンゆかりの観光地になっていまして、悪魔島を見下ろしながらフレンチレストランで食事ができます。
また、実際に出かけてみると、最後に飛び込む有名なシーンの断崖は、映画ほど絶壁ではなかった事実が分かったりします。
自分が海外の僻地に行く時に連れて行くキティちゃんのぬいぐるみがあるんですが、その時もキティちゃんを監獄の鎖につながれた風にして記念写真を撮ったりの罰当たり行為も…。
ところで、フランス領ギアナは虫好きには知られた珍しい蝶の宝庫でして、同好の士から「なんだ、蝶、穫ってこなかったの?」と指摘され、少々悔しい思いもしました。
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■パピヨン
監督/マイケル・ノアー 脚本/アーロン・グジコウスキ 出演/チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、トミー・フラナガン、イヴ・ヒューソン 配給/トランスフォーマー 6月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー。
■1931年、パリ。「狂乱の時代」の終焉。胸に蝶の刺青を入れていることから“パピヨン”と呼ばれた男は、無実の罪で終身刑を言い渡され、フランス領・南米ギアナの悪魔島に送られる。周囲を海に囲まれたこの島は脱出不可能な場所として知られ、囚人達は人権をはく奪された上に過酷な強制労働を科せられていた。絶望と死が支配する場所で自由と希望を求めてあがくパピヨンは、志を同じくする紙幣偽造の天才ドガと出会い、やがて2人は奇妙な友情で結ばれてゆく…。
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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。画像提供元: