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政局ドタバタの蔭で 密かに進行する「国民皆保険」の危機

 消費税騒動のドサクサに紛れて成立した同関連法案の一つに、社会保障制度改革推進法(以下=推進法)がある。ウラで操る財務省の財政再建案のベースになっている法律だが、その根底にあるのが医療費亡国論。旧厚生省保険局長・吉村仁氏が発表した「医療費増大は国を滅ぼす」という持論のことで、これがまさに“格差社会拡大政権”による恐るべきシナリオなのである。

 貧富の差に関係なく利用できる『国民皆保険制度』が実現したのは1961年のこと。その後50年余にわたって『誰でも、いつでも、どこの医療機関でも』国民は等しく医療が受けられた。ところが、推進法が通ってしまえば国民皆保険は崩壊し、必要な医療が受けられなくなる危険があるという。推進法は財政再建の観点に立ち、医療をはじめとする社会保障のあり方を見直すことを目的としたものだが、そこには巧妙なワナが仕掛けられているのだ。
 「これまで幾度となく医療制度改革は行われてきましたが、その際どんな場合でも『国民皆保険制度の堅持』という文言が抜け落ちたことはない。しかし推進法では初めてこの言葉が消え、『保険制度に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持するとともに』という非常に意味深な言葉が使われている。原則として…とは『皆保険制度から除外されるケース(人)がある』ということにほかなりません」(医療ジャーナリスト)

 新しい治療法や薬が開発された場合、一般普及ができると判断されれば健保が適用され、国民は等しく医療技術の進歩の恩恵が享受できる。推進法はさらに健保が適用される治療の範囲を「適正化」および「削減・縮小」するとしていくことをうたっている。これは一体、何を指すのか。専門家はこう具体例を挙げる。
 「費用の高い医療や医薬品は健保を適用しない。つまり、医療費をまともに払えない貧乏人の排除が第一です。次に免責制度を導入し、一定価格以内の治療、投薬は健保適用外とする。また本人や家族が望んでも、健保を使った終末医療は行わない。そして4つ目は、健保適用のジェネリック医薬品を拒否して先発薬を使う場合の差額は自己負担になる…などでしょう」

 日本の国民皆健康保険制度は、日本をバカにしているオバマ大統領でさえ見習うべしとしている世界に誇る制度。霞が関のシロアリに食い尽くされて、瓦解することは許されない。

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