「たとえば、デトロイトタイガースは主軸打者が右バッターばかりなので、左バッターの松井を加えれば、面白い打線になります。壊滅的なチーム低迷に陥っているマリナーズが、松井獲得を検討しないはずがありません。イチローとの不和? 現段階では何とも言えないが、そういう個人的な事情は二の次でしょう」(米メディア陣の1人)
こうしたアメリカ球界の情報を聞く限り、松井はエンゼルスを離れ、新天地で仕切り直した方が良さそうである。
しかし、松井はエンゼルス残留を第一希望に挙げていることが分かった。関係者の1人は「球団がいらないと言えば、状況は一変する」と前置きしたうえで、こう証言する。
「プライドの問題ですよ。ペナントレースの山場だった7月に2割そこそこの打率しか残せず、代打を遅らせる屈辱も味わいました。地元ファンのブーイングも分かっています。このまま退団することになれば、自分は逃げたことになると解釈しています」
9月以降、松井は日本人メディアの前でも意味シンなコメントを口にするようになった。
「ここでのキャリアは何もせずに終えるのではなく、勝って終わりたい」
前出の米メディア陣によれば、優勝戦線を争うメジャー・上位球団が『最終補強』として、駆け込みトレードを行う7月、いくつかの球団は「松井がトレード市場に出される」との情報を掴み、その動向を見守っていたという。今季のエンゼルスは優勝戦線から脱落してしまったので、「ベテランを放出し、その見返りで若手を獲る」側になっていたが、地元メディアは「松井を捨て、有望な若手を」「マイナーで若手が成長してきたので、松井を出し…」と、放出論をさらに煽った。
松井に『代打の代打』が送られたのは、その約1カ月後のことである。
「松井放出論を否定し、『必要な戦力』と訴えていたのは、ソーシア監督です」(現地特派員の1人)
そのソーシア監督も消化試合と化したここ最近、若手外野手をテストし始め、松井をベンチスタートに下げている。「このままでは終われない」なる松井の言葉から察するに、エンゼルスでの再起(再契約)が最優先希望なのは間違いなさそうだが、こんな指摘も聞かれた。
「松井は自分を必要としてくれるチームでプレーしたいと思っています。昨季、ヤンキースとの交渉を早々に打ち切り、エンゼルスと契約した経緯もあるので、他球団の出方次第では…。来季、地元・アナハイムのファンはよほどの好成績を挙げないと松井を許してくれないと思う」(プロ野球解説者の1人)
古傷の膝は完治に向かっているが、「松井自身が全力疾走する恐怖を払拭できていない」との情報も聞かれた。
アナハイムのファンによるブーイングにも手厳しいものがあるが、それでも残りたいと言うのは、「イチローの軍門に下るよりマシ」と思ったからか…。それは冗談としても、松井の希望する『チーム残留』はいちばん辛い選択でもあるようだ。