選挙戦真っただ中の政治家の公約ほど信頼できないものはないが、クリントン候補のこの約束に世界中が沸いた。UFOやエイリアンを笑いのタネにする日本では、ほとんど報道されなかったが−−。
「キリスト教信者が多い米国では長い間、創造論が社会の基礎になってきました。共和党の大統領候補だったテッド・クルーズ氏は上院議員時代に『進化論は共産主義者が作ったウソだ』と述べていますし、同じく候補だったジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏も進化論には慎重な態度を取っています。これは創造論を信じている有権者の票を失わないための策であり、逆に言うと創造論を否定していない人が相当数いる証拠でもあります。11月の本選でクリントン氏との対決が予想される共和党候補ドナルド・トランプ氏は、まだこの“宇宙人問題”を語っていませんが、彼に投票しようと考えていた有権者がファイルの公開を実現させたいがために、クリントン氏に投票行動を移すかもしれません。頭の切れるクリントン氏は、そこまで計算に入れて宇宙人ファイルの公開を公約したのではないでしょうか」(在米日本人ジャーナリスト)
選挙戦の舞台裏がどうであれ、宇宙人に関心のある人たちにとって大事なことは、まさに“存在”を信じてやまない「極秘ファイル」の公開であり、もし公になれば何が飛び出すか興味は尽きない。
クリントン氏のこの発言に大いに期待を寄せているのが、サイエンス・ジャーナリストの矢追純一氏だ。
「彼女の発言には伏線があるのです。2013年、オバマ大統領の上級顧問に就任した元弁護士のジョン・ポデスタ氏が翌'14年に退任する際、『最も悔やまれることは、UFOファイルの開示ができなかったこと』とツイッターでつぶやき、これを大手メディアなどが取り上げて話題になりました。実はポデスタ氏は、ヒラリー候補の夫ビル・クリントン大統領の時代に主席補佐官を務めていた人物。結局ビル、オバマ両大統領はUFOファイルなどの極秘情報には触れませんでした。現在、ポデスタ氏は大統領選においてヒラリー陣営のスタッフチェアマンを務めており、ファイルの存在を突き止めることやその公開に執念を燃やしています。彼はヒラリー・クリントン候補に望みを託しているのです」
クリントン氏は子どものころに宇宙飛行士を夢見ていた時期があり、かねて宇宙や宇宙人に関心があったとされる。これまで国を挙げてUFOの調査・分析に取り組んできた米国の中枢にいた同女史の口から「公開」の一言が発せられたというのは画期的だ。
一方、ポデスタ氏は自身が主催した記者会見の場において、「今こそ真実を知らなければなりません」「当然、包み隠さず開示されるべきです。国民が真実と向き合うためにも」と自らが機密情報に触れている可能性をにおわせている。