「自分がバリバリ投げられるうちに、地元の子供たちに見てもらいたかった」
藤川球児(34)のこの郷土愛に、高知県民は大いに盛り上がった。チーム初合流となった13日、いきなりシート打撃に登板し、打者9人と対戦して「被安打1、与四球1、奪三振2」と、まずまずの内容を披露。“練習”にもかかわらず、約500人のファンがグラウンドに駆け付けた。チーム関係者によれば、「普段の100倍」とのことだ。
「最後のバッターにライト前に運ばれました。高めの甘い球でしたが、この1球は新しいチームメートに花を持たせた感じも受けました。独立リーグでやっている選手と、ほんの1カ月ほど前までメジャーにいた投手とでは、やはり力の差があり過ぎます」(地元紙担当記者)
藤川の郷土愛にウソはない。しかし、NPBつまりは“プロ野球”復帰の可能性は、むしろ高まったと見るべきだろう。
「独立リーグ行きを決めた理由の一つに、古巣阪神の説得失敗もあります。彼もこのまま独立リーグで終わるつもりはないでしょう」(球界関係者)
藤川の高知入りに至るまでの経緯には、不可解な点が多い。まず、テキサス・レンジャーズから事実上の戦力外通告を受けたのは、5月17日(現地時間)。その後、ウエーバー公示されたが、獲得の意思を示す米球団は現れず、日本球団との交渉も可能となった。
「古巣阪神の反応は早かったですよ。特命を受けた現地関係者が藤川との接触に成功し、帰還に関する条件も聞き出しています」(在阪記者)
また、国内では藤川の代理人を務める人物とも接触。前向きな回答は得られなかったが、この時点で「藤川は阪神に帰ってくる」と思ったファンも多かったはず。
「'14〜'15年のオフ、実は巨人渉外担当者が藤川の獲得に動いていました。シカゴ・カブスからレンジャーズ入り後もメジャー昇格の厳しい競争にさらされ、巨人だけでなく、横浜DeNAもその推移を見守っていました」(前出・関係者)
6月1日に高知入りが発表されたわけだが、その際、本誌は水面下の興味深い情報をキャッチした。
「藤川サイドから売り込みがあったんですよ。5月25日、電話で『入団は可能か?』と。大慌てでしたよ」(四国リーグ関係者)
藤川の代理人は高知に売り込みをする一方で、阪神首脳陣とも会っていたわけだ。また、藤川自身も高知入団会見で、「(阪神入りが)決まったみたいな報道もあった。何で、勝手に話が進んでいくのか…」と、首をかしげた。満面の笑顔だったが、このときだけは憤った表情を見せた。しかも、阪神以外のNPBチームからもオファーがあった旨も明かしている。
「高知では登板試合ごとにチケット収益の10%が児童養護施設に寄付されることも決まりました。藤川の契約は『1試合ごと』で、登板日が事前告知されます」(前出・在阪記者)