松井秀喜(38)の父親・昌雄氏と親しいマスコミ関係者から聞いた話だ。松井の本心を知る数少ない人物の証言である。
昨年12月27日(日本時間28日)、巨人、ヤンキースで活躍したゴジラ松井が引退を表明した。日米通算2643安打、507本塁打を放ち、20年間に及ぶ現役生活にピリオドを打った。
昨年7月25日、レイズから戦力外通告を受けた後も、ニューヨークでトレーニングを続けていた。「トリプルAからでも這い上がってやる」。自ら鼓舞しメジャー球団からのオファーをひたすら待っていた。
僅かな期待ながらも、古巣ヤンキースからの打診を待ちわびていた松井に、衝撃が走ったのは12月19日だった。FAとなっていたイチロー(39)とヤンキースが2年1300万ドル(約11億円)で契約したことを正式に発表したからだ。
お互いライバル視する松井とイチローには運命の悪戯が隠されている。
昨年7月23日、イチローがヤンキースへ電撃移籍したニュースは日米のファンを驚かせただけでなく、松井の胸には大きく突き刺さった。考えられない衝撃に絶句した。松井が最後の花道として熱望していたヤンキース復帰に、イチローもまたラストを飾る球団に選んだからだ。
しかも、2日前に松井はレイズから戦力外通告−−。常に意識し合ったスター選手からすれば、屈辱以上のものだったに違いない。
また、2人の立場は予期せぬ方向へも波及していった。昨年3月、大リーグ日本開幕戦レセプションで、松井との確執が消えてない渡辺恒雄球団会長が、イチローへ巨人監督要請したことだ。さらに、同8月には、ラジオ番組で将来の巨人監督として「松井かイチローか」という個人名を出した質問に対し「僕はイチロー」と渡辺会長は答えている。
巨人の4番を背負った松井と外様のイチロー。松井は「読売は嫌いだから帰らない」または「ナベツネ嫌い」を発言したことはないが、松井が巨人からヤンキースへ移籍('02年)したときの経緯に携わった側近のアドバイスも、「意地でも読売には帰るなよ」だった。