A:歯科の領域において、精神的ストレスが過剰な人に比較的よく見られる症状の一つに、就寝時の歯の食いしばりがあります。ストレス解消の生理現象ですが、過剰な食いしばりは顎関節症の症状の原因の一つです。
無意識ですが、相当な力がかかるため、ご質問の方のように朝起きたときに顎がだるいこともあるのです。
顎関節症は、噛み合わせの異常(不正咬合)によってもたらされます。どこか一カ所、噛み合わせが高いところがあると、その異常を体は自然と調整しようとします。そのため、食いしばりが生じてしまうのです。噛み合わせの高さは、ミリ以下の単位で狂いがあっても、噛み合わせ全体に影響します。
睡眠は普通、起きているときに受けたストレスを解消する作用があります。就寝中は、自律神経は副交感神経が優位になり、脳内ホルモンのセロトニンやドーパミンが分泌され、ストレスを緩和します。
就寝中の食いしばりは、そのこと自体、副交感神経優位になっていない証明です。しかも、その行為が続くことによってなお副交感神経は抑えられ、セロトニンやドーパミンの分泌は抑制されます。
結局、慢性に移行すると、精神的ストレスが解消されないため、仕事に集中できなかったりします。前述したように、朝起きたときに顎も体もだるかったりします。また、首や肩がこることもあります。
●噛み合わせの異常を治すのが前提
食いしばりがひどくなると、日中も食いしばるようになり、本人もそのことを自覚することがあります。
必ずしも自覚するとは限りませんが、前述したような症状があれば、就寝時の食いしばりを疑ってみましょう。
就寝中の食いしばりの原因は噛み合わせの異常です。ですから、食いしばり解消の前提として、歯科医院で噛み合わせの異常を治してもらいましょう。噛み合わせの異常は歯周病の原因にもなるので、ちょうどいいでしょう。
冒頭で述べましたが、食いしばりは精神的ストレスが過剰な人に比較的よく見られます。慢性のストレスに移行しないようにしましょう。体が正常になれば(噛み合わせの異常を正せば)、心にもよい影響は及びます。まずは、歯科医院を受診しましょう。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
独自の歯周病治療で名高い。神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、横浜市でとつかグリーン歯科医院を開設する。歯学博士。歯科領域に漢方を取り入れ、天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。