この調査によると、現代の工業化社会は持続不可能な資源消費欲求の重みに耐え切れなくなり、崩壊する運命にあるという。さらに貧富の二極化がこれを加速。「ローマ帝国やメソポタミアの文明も、みな崩壊した。これは高度に進化した複雑で創造性豊かな文明も、もろくて永久ではない何よりの証拠だ」としている。
「研究班では、こうした過去の崩壊例から人間と自然の力学を調べ、文明衰退に大きな影響を与えた要因を特定した。それが、人口、気象、水、農業、資源。これらが複雑に絡み合い、“資源浪費”と“貧富の差”という二つを持ち合わせた社会状況が生まれると、その文明はもろくも崩壊し始めるというのです」(サイエンス記者)
これを加速させるのが、先進国に多く住むエリート。富を生み出しているのは人口の大多数を占める大衆にもかかわらず、エリートからは富のほんの一部しか回ってこない状況だ。
「さらに技術革新で資源使用効率を高めても、人口一人あたりの資源消費量と資源採取の規模も同時に増えてしまう傾向がある。そのため、有効な対策がない状態では、消費の増加で資源使用効率を高めた分がチャラになってしまうことが多いというのです」(同)
何やら難しい話だが、つまりは一握りのエリートがカネにあかせて資源を浪費しているというのである。例えばそれは、温暖化が進み二酸化炭素を出さない生活が必要なのに、金持ちはおかまいなしという状況だ。
このレポート通り、本当に地球は滅亡するのか。
ジャーナリストの村上和巳氏が言う。
「資源の枯渇という点で言えば、石油の埋蔵量は年々変動しています。しかも、採掘技術の飛躍的な進歩により、以前では考えられなかったシェールガスも手に入るようになった。ここへきてオイルサンドの改質もよくなっている。石油の推定埋蔵量ほど当てにならないものはないと思いますね」
レポートでは、過去200年で農業も工業も生産性はかなり向上したが、それで“資源消費が減る”ということはなかったという。そのため、現代を反映した状況では崩壊回避は困難という結論に至ったとはいうものの、村上氏は「調査を行ったアメリカ人は勝者と敗者しかないという前提の考え方で、単純過ぎる」と見る。