番組が12年にスタートした際、キャッチコピーは“あなたの街をおじゃMAP!!”だった。おバカ男性トリオの羞恥心(つるの剛士、野久保直樹、上地雄輔)や木下優樹菜、里田まいほか、多くのタレントをスターにした“クイズ!ヘキサゴン”シリーズが、島田紳助の芸能界引退によって終了したことを受けて、ピンチヒッターのような形だった。
そのころの香取は、SMAP最年少がゆえに元気のアイコン的存在。絵画をはじめとした芸術的な才能も注目されていたが、やはり、『笑っていいとも!』(フジ系)で定着した明朗快活なイメージが強かった。そして、ザキヤマこと山崎弘也も、適当で底抜けに明るいキャラ。そんな2人が新番組のロケ先で、どんな化学反応を起こすのか。コアなファンは、そこに着目した。結果、凸と凹のごとく、見事なほどにピタリとハマった。その理由はひとえに、ザキヤマの攻守配分にあるだろう。
ザキヤマは、芸人主導のバラエティ番組となれば、とことん暴走する。特に、テレビ朝日系“ロンハー”シリーズでカンニング竹山をおもちゃにするときの弾け方は、常軌を逸している。それはさながら、ブラックマヨネーズや千鳥のよう。2人がゾーンに突入すると、もう誰も止められないのだ。
しかしその一方で、ザキヤマほど、適材適所に収まることができる芸人はいない。アラフォーアイドルのなかでも群を抜いたバラエティスキルを身に付けている香取とコンビを組んだとき、それが顕在化する。とかく、香取を自由に暴れさせた。自身も図々しく前に出ていると見せかけて、実は香取の魅力を打ち出す役目を担った。その姿は、子を見守る母である。
香取がSMAP解散騒動の渦中にいたとき、話すことが許されるギリギリのところまで踏み込んで聞いたのは、ザキヤマだ。そして、解散が決まって日本中が落胆していたとき、SMAPの往年のヒットソングはもちろん、第二の人生を踏み出すにふさわしいアルバムソングまでBGMにして、ファンの心を代弁したのは『おじゃMAP!!』だった。
視聴者の投稿によって願いをかなえる大型企画では、結婚式に潜入することもあった。感動ドキュメントもあった反面、“おジャーマップ”のように、ごはん10合でその土地の名産を平らげていく満腹企画もふんだん。超ローコストで胃袋を満たすこともあれば、バカ盛りで胃袋を破たんさせたこともあった。ほかにも、一緒にジャニーズ事務所を退所した草なぎ剛、稲垣吾郎とのホンネトーク、隠し子騒動を逆手にとって爆笑問題・太田光と手を組んで、相方の田中裕二をだますドッキリ企画もあった。
ザキヤマという後方支援があって、香取が遊泳した『おじゃMAP!!』。そんな番組が終焉する意義は、大きい。