先場所の逸ノ城は大関獲りの足固めどころか、たった4勝しかできず、大きく期待を裏切った。そのため三役から陥落は致し方ないとしても、横綱、大関との対戦圏外までとはちょっと落ち過ぎ。どうしてこんなことになったのか。
逸ノ城は先場所の千秋楽の支度部屋で「足りないところはいろいろあります。夏巡業では真っ黒になって稽古します」と出直しを誓っていた。このモンゴルの元祖怪物の失速は大相撲界全体の痛手だけでなく、周りの力士たちにとっても他人ごとではない。中でも5年前に一緒の飛行機でモンゴルから来日し、鳥取城北高に相撲留学した大関の照ノ富士はいら立ちを隠そうとしない。
「人一倍、大きな体を持ちながら、それをなかなか生かしきれず、もたついている後輩を黙って見ていられないのでしょう。8月中旬の一関市巡業(岩手県)でも土俵に引っ張り上げ、まず逸ノ城の得意の形で攻めさせた。ところが照ノ富士が本気で攻めるとあっけなく5連敗。これにはさすがに照ノ富士もあきれ果てて『上に引き揚げてやろうという気持ちはあるんだけど、それが伝わっていない』とため息をついていました」(担当記者)
問題は、やはりヤル気だ。今年に入って一気に花開いた照ノ富士と違って、逸ノ城には入門したときから部屋に自分よりも上の力士や強い力士がいない。その上、小部屋から誕生したスター力士だったため、部屋の師匠夫妻をはじめ周囲が甘やかし、慢性的な稽古不足、試練不足に陥ってしまった。
一転して定着した“デカいヤラれ役”のレッテルを剥がすには、よほどの自覚が必要。「末は横綱、大関間違いなし」と言われながらつぶれていった力士は枚挙にいとまがない。
果たして逸ノ城はどこまで自分にムチ打ち、いじめ抜けるか。大きな試練の時を迎えている。