「胆汁うっ滞(胆汁の流れが減少または停止している状態)や胆管細胞の破壊が生じると、細胞内や胆汁に存在するγ-GTPが血液中に漏れ数値が上がります。また、胆管に胆石が詰まった場合も、うっ滞が生じることがあるのです」(同)
悪化すると肝臓の組織が硬くなる胆汁性肝硬変になってしまうこともあるというから要注意だ。
工藤さんの場合は、健康診断の2カ月前から発熱、黄疸といった症状が出ていたという。
「仕事のし過ぎと暴飲暴食が原因だと思って、会社も休みを取り、お酒と脂っこい食事はやめていたんですけどね。出社した途端、クライアントと食事会でしょ。勧められるままシャブシャブを食べて、焼酎をがぶがぶ飲んだ。案の定、肝機能が2000と聞いて絶体絶命だと思いました」
ちなみに、肝機能障害の可能性がある症状には次のようなものがある。
《かゆみ》
胆汁のうっ滞による皮膚刺激物質の増加や、無毒化作用の低下が影響している。
《疲れやすい》
代謝・無毒化作用の低下は、慢性的な疲労感のもとになる。
《むくみ》
胆のうの状態が悪いと、発作や消化不良を起こしやすい。十分な栄養をとれなくなってしまうこともある。また、代謝機能が低下すると、胆のうの病気にともなう、このような摂食障害と重なり合ってタンパク質の少ない薄い血液になってしまうという。薄い血液は水分が血管の外に漏れ出しやすく、体のいろいろな部分に溜まってしまう。
このように、肝臓内の胆汁うっ滞が長く続くと、胆汁性肝硬変となり、腹水が溜まったり、腹部の血管が浮き出たり(静脈瘤)、痔出血など他の肝硬変と同様の症状がみられるようになる。また、昔から胆石を持っている人の5%は、胆のうガンにかかるデータも出ている。
「胆のうガンはすい臓ガン同様極めて判断が難しく、内視鏡切除してガンと判明し慌てて開腹手術に切り換えるというケースもあります」(井上理事長)
工藤さんの場合、胆のうもすい臓もガンでなかったのは幸いだったのかもしれない。結局、暴飲暴食の機会がある営業職からは退き、長期休職することとなったという。
「自分の肝臓は大丈夫」と思っていても、実は体を悲鳴を上げ、突如、数値として表れる。そんなことになる前に、体調の異変に気がついた時は検診を受けることを勧めたい。