渡辺容疑者は現在までに、「霜見に言われるまま投資し、数億円もの損失をかぶった恨みから一人で2人を絞殺した」と供述している。周囲の関係者は異口同音に「渡辺は“瞬間湯沸かし器”のような性格で、すぐに激高する」と言うが、だからといって霜見さんへの恨みだけで、なぜ夫人まで巻き込まなければならなかったのか。
しかも“取り返した”現金は、共犯の桑原隆明容疑者(41)が質屋で財布を換金した金額だけ。およそ数万円である。ちなみに霜見氏は、帰国時700万円の現金を所持していたことがわかっているが、家に残されたのは400万円のみ。消えた300万円の行方は不明のままだ。
渡辺容疑者は2002年、東京・中央区に『日鯨商事』という社員20人強の水産加工会社を、資本金1000万円で設立している。周辺からは、彼の金満ぶりがこう伝わっている。
「最初はスーパーなどに鯨肉を卸していたが、'07年ごろからは海外に進出、オマーンの大手水産会社数社から魚介類を輸入するようになった。会社の経理は奥さんがやっていて、社員にはアメックスのゴールドカードを渡して『経費はここから落とせ』と指示していた。当時は高級外車を乗り回し、月収は3000万円と豪語していた」
ところが、日鯨の業績は暗転する。端緒となったのは、海外進出してすぐに中近東の詐欺師にだまされたこと。それに追い打ちをかけたのが、霜見氏からもたらされた投資への失敗だ。
「'09年の夏ごろには日鯨を事実上清算。'10年には従業員を不当解雇したとして民事訴訟で敗訴し、約100万円の損害賠償を命じられているが、いまだ支払っていない。会社が左前になり始めた'08年ごろに、起死回生をもくろみ、上場企業を買収しようという無茶なことを考えて、どこからか8000万円ほどの資金を調達してきた。霜見さんと出会ったのもそのころだ。『資金を増やしてから私が適当な企業を探しますから、M&Aをやったらいい』と誘われ、4、5000万円を彼に預け、食品企業の買収に絡む投資へ参加したものの結局失敗した」(霜見さんの知人)