不完全燃焼ともいえる一戦だった。出走馬最後の16番目にゲートインすると、スターターは間髪入れずにスタート。タイミングを逸したサムソンは中団のインを追走したが、最初の直線でゴチャつき、後方から3頭目まで後退。最後の直線でも他馬に寄られ、いったんブレーキをかけるアクシデントに見舞われた。
インがポッカリあくことが少なくないロンシャンのチャンピオンディスタンス。「イチかバチかの騎乗をしますよ」。武豊騎手は金星を狙い思い切った賭けに出たが、結果的にはリスクばかりを背負ってしまった。
「スタートはまずまずだったが、その後、外から被されて窮屈な位置取りになってしまった。直線に向いて一瞬、いい感じで前との差を詰めたけど、最後は伸びを欠いてしまった」(武豊騎手)
とはいえ、競馬の本場から、その存在を認められていたことも事実。最初の直線の不利は不可抗力といえるが、身構える暇も与えられずに切られたスタート、進路をふさがれた最後の直線の不利は、もはや“イジメ”に近い形だった。
「4番枠を生かして前で競馬ができれば違ったと思う。残念」とは高橋成師。しょせんは島国の“お山の大将”…そう軽く見られていたら、あそこまで厳しいマークを受けることはなかっただろう。世界が日本調教馬に脅威を感じ始めていることを改めて印象付けた一戦でもあった。