正恩委員長の親書を携え特使として訪韓した与正副部長は、2泊3日の日程のすべてにわたって“国賓待遇”でもてなされ、文在寅大統領に早期訪朝を要請し、対話機運を一気に高めた。
一方、あらためて「制裁に効き目がない場合は軍事行動を含む強硬措置を取る」と明言した米国のトランプ大統領は、ホワイトハウス最強の脚線美を誇る愛娘、イバンカ大統領補佐官を投入し“与正超え”を狙ったのだが…。
「トランプ大統領の意を受けた米財務省はイバンカ補佐官が訪韓するタイミングで、北朝鮮が制裁逃れを目的として接触を図る中国や香港など27の海運会社と28船舶を新たに制裁対象にしたと発表しました。北に核放棄させるための“最大限の圧力”は緩めないということをイバンカは文大統領に伝え、南北首脳会談に前のめりな文政権にクギを刺し、さらには嫌米世論を懐柔する目的もあったと思います。ところが、イバンカの韓国での知名度は、与正副部長に比べるといまひとつパッとしません。最大級のもてなしながら、メディアの扱いは与正ほど盛り上がらなかったのが実情です。左派である現政権中枢には知米派が1人もおらず、そもそもイバンカの公職は補佐官にすぎないからです。文大統領自身が与正のときのように張り付くこともなく、主に大統領夫人が接待するレベルでした」(大手紙ソウル支局員)
当初、女性脱北者との面談を計画するなど、外見とは裏腹にバリバリの対北強硬路線を隠さなかったイバンカ補佐官だったが、その“美貌”のみに熱視線が注がれるだけで、五輪を契機に韓国世論の籠絡を狙う正恩委員長と南北対話の進展を目指す文大統領の思惑を破談させるまでには至らなかった。このままだと、北朝鮮を弱体化させる日米のもくろみはオジャンだ。
それどころか正恩委員長の“対話戦略”に文大統領だけでなく、ドイツ出身のトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長までもが完全に踊らされてしまった。
「驚いたことに、スイスとの対戦で0対8という大惨敗を喫し、打ちひしがれた女子アイスホッケー南北合同チームに、バッハ会長が『元気を出しなさい。あなた方が合同チームで戦うこと自体がすごい成果だ』と褒め称えたのです。IOC会長が敗北したチームを訪れ、よくやったと励ましの言葉を掛けることはめったにありません。独週刊誌のシュピーゲル電子版も2月12日、バッハ会長は密かにノーベル平和賞を狙っていると突っ込んで報じていましたよ」(現地取材記者)
北との融和をあおる韓国側の振る舞いを目の当たりにしていた取材陣を最も驚かせたのは、2月11日に与正副部長を出迎えたイムジョンソク大統領秘書室長の笑顔だ。それはまるで、古くからの知り合いのような親しみのこもったものだった。
「1989年、22歳の韓国女子大学生が北朝鮮に極秘潜入し、朝鮮半島の統一を訴え、当時の金日成主席と面会する映像が韓国で大騒動になったことがあります。演出したのが誰あろう当時韓国の民主化を叫ぶ学生運動家だった任室長なのです。正恩委員長が文大統領の訪朝を要請したことを受け、これを協議するための北朝鮮特使として、任室長の名前が取り沙汰されていますよ」(北朝鮮ウオッチャー)