7月5日の対東京ヤクルト戦で広島打線が復活。クリーンアップで全5点を叩き出し、快勝したことに加え、緒方孝市監督(46)に“2人の救世主”が現れた。
「ドラフト3位で指名した新人左腕投手の塹江(ほりえ)敦哉(18)が一軍昇格する可能性が高まっています。他球団は『一人前になるまで5年近く掛かる』とし、上位指名を見送った球団もいくつかありましたが、広島は将来性を見込んで指名しました。首脳陣もこんなに早く一軍で投げられるところまでになるとは思っていなかった」(球界関係者)
塹江が存在感を見せたのは、6月29日に行われた侍ジャパンの壮行試合。ユニバーシアード夏季大会を戦う大学選抜チームとNPB二軍選抜が行った試合だ。2番手でリリーフ登板した塹江は打者3人と対戦し、1奪三振と内野ゴロ2つで抑える。その投球内容は指名を見送った他球団スカウトに地団駄を踏ませるものだった。
「三振を奪った相手は、今年のドラフトで1位指名が可能性も高い明治大の高山俊外野手(4年)です。プロだから学生に勝って当たり前という見方もありますが、年齢を比べれば18歳と22歳の対決です。左打者の内角を攻めて力負けしていなかった」(在京球団スカウト)
同試合は今秋ドラフト会議の上位指名候補が一同に集まり、なおかつプロの二軍と試合をするということで、「実力を見極めやすい」と12球団スカウトや関係者が熱い視線を送っていた。広島は現在、頼りになる救援投手が少ない。そこで塹江に、短いイニングで勉強を兼ねて、夏場で一層苦しくなる救援投手陣を救ってもらおうという案が出るかもしれない。
そして、もう一人の“救世主”は意外なところから現れた。
「ニューヨーク・ヤンキースの田中将大も広島の救世主ですね(笑)。田中は前半戦に苦しみましたが、本来の投球を取り戻しつつある。しかし、調子の悪いときに大々的に批判記事を載せるのが米メディアのスタイルです。田中も続けて勝てていないので、これに関連して、米スカウトの間では同世代で同じような球歴のマエケンの評判も落ちています」(ベテラン記者)
前田健太(27)の米球界志望は変わっていないが、焦って自分を安売りするような渡米はしないはずだ。間接的とはいえ評価が下がっているのであれば、米球界側が文句を付けようのない成績を挙げ、いち早く渡米したいと考えるだろう。
ベテラン黒田は健在。現エースの前田、時期エース候補の大瀬良、そして、一気に評判を上げた塹江。これだけの投手を確保できたとなれば、緒方監督もニンマリである。
「クリーンアップが爆発した5日のヤクルト戦ですが、単に結果が出たというわけではありません。新井がファールで粘っているのを次打者のエルドレッドが見て、配球と球筋を読み、一撃を食らわしました。こういう繋がりが広島本来のスタイルで、非常にいい内容で点を取っています」(前出球界関係者)
4連勝で3位まで浮上。勝率はまだ5割に達していないが、首位阪神は射程範囲内だ。田中の“思わぬ援護射撃”もあって、広島は不振の投手陣を建て直すきっかけを掴んだ。そういう意味ではチーム外のことなのだが、田中と大学選抜チームが真の救世主かもしれない。