そこからさらに北上すると、埼玉県本庄市に入る。この街は、2000年に「本庄保険金殺人事件」の舞台となっている。
犯人の名前は八木茂。3人の男たちを自分の息のかかった愛人と偽装結婚させ、多額の保険金を掛けた上で次々と殺害した。逮捕前、八木は連日、経営していたスナックでマスコミ相手に有料記者会見を開いたことでも知られており、顔を覚えている人も多いのではないだろうか。
八木が経営していたスナックは、今も建物が残されている。国道17号線から車で5分もかからない場所にあり、スナック跡の建物の隣には、保険金を掛けていた男たちを住まわせていた平屋の建物も健在だった。「八木はトラックの運転手で金を作って、80年代の後半ぐらいに、ここに来てからスナックを開いたんだよ。当時は、カラオケができるスナックなんてなかったから、夜7時の開店前にはもう客が並んでいたよ」
スナックからほど近い場所に暮らす、幼馴染みだという男性が言う。「子どもの頃の八木は、ひょろっとしていじめられっ子だったけど、大人になってから彫り物をいれたりして、威勢がよくなってたね。スナックの酔っぱらいが、よくうちの家の壁に小便を引っかけたりしたもんだから、盆暮れにはちゃんと菓子などを持ってきたりして、義理は通す男だったよ。まさか保険金をかけて、人を殺しているようには見えなかったな。スナックも儲かっていたし、金には困っているようには見えなかったけど、金の亡者になっちゃったんだな」
八木は愛人の女たちを巻き込み、次々と保険金をかけた男たちを奈落の底へと落としていった。すさまじい金への執着である。