A:認知症にもいくつかタイプがありますが、アルツハイマー型認知症が最も多く、その次が脳血管性認知症です。その両方が合併する症例も多いとされています。
現在使用できる認知症の薬は、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効能はありますが、治ることはありません。この病気は脳の神経細胞が変性しますが、それを元に戻すことは不可能だと言ってよいでしょう。また、この薬に予防効果は認められません。
一方、脳血管性認知症は、高血圧が主な原因で、微小脳梗塞ができます。いきなり呂律困難や片麻痺といった明らかな症状を呈しません。微小脳梗塞を知らず知らずの間に繰り返し、脳血管性認知症になって行くのです。
アルツハイマー型認知症の場合は、人に話を合わせられるので、一見、認知症でないような印象があります。しかし一生懸命その場を取り繕うために話すだけで、話の内容はまったくのでたらめです。これを医学用語では作話と言います。
一方、脳血管性認知症の場合、典型的な症状は異なります。頑固で協調性がなく、大声を出し介護に手がかかります。
●血圧のコントロールが予防の鍵
長生きすれば認知症は一定の割合でかかりますが、予防することはある程度可能です。脳血管性認知症は、前述したように、主なリスクは高血圧です。高血圧があると脳卒中を発症しやすく、脳卒中になると血管性認知症になる可能性も高まります。ですから、高血圧の人は、血圧をよい状態にコントロールすることが求められます。
ご質問の方は、祖父も父も高血圧でしたし、本人も血圧が高めとのことですから、ぜひ今のうちから血圧をよい状態にコントロールしましょう。ちなみに私も血圧が高く、降圧剤の内服を欠かせません。
普段できることとしては、歩くことやスロージョギングは高血圧の改善に有効です。この他、脂質異常症や糖尿病も血管性認知症のリスクですから、それらに対する対策も必要です。
牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。小山病院(大阪市東住吉区)院長。