●松本裕樹(まつもと・ゆうき=盛岡大付/投手・右投左打)
投手として150キロ強の直球と、打者として高校通算54アーチを誇る“二代目二刀流”。スカウト部長など、編成トップの直接視察数が最も多い。高田繁DeNAベイスターズGMも「凄い伸びしろを感じる」と絶賛している。
だが、プロスカウトたちが最も評価しているのは、したたかな投球術だ。投手としてのスキルは、他にドラフト1位候補として名が挙がっている有原航平、安楽智大、山崎康晃、高橋光成以上。走者が得点圏に行くまでは70%の力で投げ、窮地になって初めて全力投球する。また、要所になるまで決め球の変化球を隠し、かつ、外角勝負もできる投球術も光る。中村勝広阪神GMは「北別府(学=元広島)みたい」、早川実楽天スカウトグループマネージャーは「ベテラン投手みたい」、山下哲治巨人スカウト部長も「息の長い投手になる。軽く投げても、グッと(ボールが)伸びる」と、各球団の編成トップクラスたちから絶賛されている。
松本自身は「練習なら打撃の方が好き。試合では投手の方が面白い」とコメント。各球団とも投手として視察してきたが、打席に立つセ・リーグ向きだろう。
●塹江敦哉(ほりえ・あつや=高松北/投手・左投左打)
夏の甲子園で富山商が快進撃する立役者となった森田駿哉が進学表明したことにより、一気に急浮上してきた未完の大器。
「課題は多いが、大化けする可能性がある」と、山本宣史阪神スカウトが言えば、山下巨人スカウト部長は「3位より上で指名される可能性がある」と上位指名必至との見解。中田宗男中日スカウト部長は「(今春のセンバツで活躍し、すでに社会人入りを表明している)佐野日大の左腕、田嶋投手と比べても勝るとも劣らない」とドラフト1位候補だった選手を比較対象に挙げた。
将来性では法大の左腕、石田健大以上だが、制球力の課題に課題が残りそうだ。
●栗原陵矢(くりはら・りょうや=春江工高/捕手・右投左打)
18Uアジア選手権で評価を高めた投手が高橋光成なら、圧倒的な存在感でプロスカウトを唸らせたのが栗原だ。
四番打者で正捕手として九州国際大付を夏の甲子園へ導いた、ドラフト上位指名候補の清水優心も強肩だが、その清水より投手とのコミュニケーション能力に長けていると評判が高い。スカウトの間では大卒選手の青学大の加藤匠馬、創価大の寺嶋寛大と比較されるほどの能力がある。池之上格スカウト阪神課長は「ウチにいた矢野(燿大)を思い出す」と、長年レギュラーを張った名捕手に例え、由田慎太郎オリックススカウトも「野球のセンスがある。目に力がある」と高い評価をしている。
●宗佑磨(むね・ゆうま=横浜隼人/遊撃手・右投左打)
ギニア人の父を持つハーフ。今夏は怪我の治療のため、甲子園神奈川県予選にも出場できなかったが、身体能力の高さが非常に評価されている選手だ。その証拠にヤクルト、ソフトバンクなど9球団が視察している。「体が細すぎるので心配」という声もあるが、水谷哲也横浜隼人監督は「スポンジのように吸収力がある子。朝から晩まで野球漬けになれば、果てしなく力がつくかも」と、将来性に太鼓判を押している。
(スポーツライター・美山和也)