中田は北九州市の出身で、高校大学ともに福岡となれば、やはり地元ソフトバンクが有力。一方、今季年俸1億円の大竹には「4年10億円」提示の、これまたソフトバンク入りが有力視されるが、カープ残留の目もまだまだある。その背景にあるのが、奇妙なまでのカープ人気だ。
プロ野球離れが止まらない中で、なぜかカープだけは人気急上昇。テレビの視聴率も高く、カープを扱った本もバカ売れしている。クライマックス・シリーズでも甲子園球場、東京ドームとも敵地にもかかわらず、スタンドの左半分は赤く染まっていた。
「堅実なカープ型経営が評価されているのです。カネがないなら知恵を使え的な手法に対し、アベノミクスの恩恵にあずかれない中小の経営者や一般サラリーマン、個人事業主の人たちがカープを応援している。カープそのものがビジネス参考書となって、もてはやされているのです」(出版プロデューサー)
ロス、ニューヨークで野球ビジネスを体得した黒田の狙いもそこにある。たとえ来季は大損となっても、生涯賃金で考えれば、算盤は十分に合うという計算だ。
親会社を持たない市民球団だけに、財力に難はあるが、その分小回りは利く。北海道日本ハム、東北楽天に続いて頂点を極めるのは“元祖地方の星”広島カープ。目ざとい投資家たちはそう見ているという。
「テレビ中継が激減しているプロ野球ですが、カープを全戦無料放送しようというプランが持ち上がっています。先の侍ジャパンの台湾戦でネット生中継を試みたニコニコ動画です。すでに、パ・リーグは数年前から『パ・リーグTV』を立ち上げて全戦放送していますが、これは有料放送。誰もが見られるものではない。もし、カープの試合がニコ動で全戦生中継されれば、相手は巨人、阪神、中日ですから、成功は間違いないし、カープ人気もさらに高まる。ニコ動の知名度も上がり、広告収入も増える。それらを背景に親会社を持たないカープは球団株を上場し、全国区に変貌しようという計画を温めているのです。そうなれば黒田は監督ばかりか、オーナーに推される可能性だってある。14億円年俸を捨ててまでして3億円でカープに戻るのは、決して恩義だけではない。彼なりのしたたかな勝算があればこそなのです」(大手広告代理店幹部)
いずれにしても、最終的に鍵を握るのはマー君の身の振り方となる。日米間のポスティング制度の見直しに予想以上に手間取り、三木谷浩史オーナーの説得も加わって楽天に逆転残留となれば、ヤンキースは黒田を全力で引き留めるからだ。
それを一番願っているのが、“優勝請負人”黒田の帰還を大警戒する巨人なのである。