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USA発 新聞、テレビではわからないMLB「侍メジャーリーガーの逆襲」 シーズン前半は過去20年間で最低の働き… 期待以上の働きを見せたのは青木宣親ただ一人

 大リーグは7月12日にシーズン前半が終了し、17日から後半戦に入る。そこで今回は、日本人大リーガーの今季前半の総括を行い、前半戦のMVP(最優秀選手)、LVP(最も期待を裏切った選手)、新人王を選出したい。

■総括
 今季前半の日本人大リーガーを総括する場合、キーワードは次の二つになる。
(1)「故障者続出」
(2)「先発投手は壊滅状態」
 ここ数年、大リーグでは即戦力になる海外の大物選手を獲得する場合、「先発投手は日本人、野手はキューバ人」というのが定説になっていた。そのため資金力のあるメジャー球団はトップレベルの日本人先発投手に莫大な投資を行ってきた。しかし、今季は3月にダルビッシュがトミージョン手術(ヒジの靭帯再建手術)を受けて1年以上登板不可能になったのをはじめ、4月下旬に岩隈久志が広背筋(肩の背中側の筋肉)の炎症、田中将大も手首の腱鞘炎と前腕筋の炎症で相次いでDL入り。和田毅もキャンプ中に左大腿部の付け根に痛みが出て開幕から欠場したため、4月末からひと月ほど、日本人の先発投手が1人もマウンドに立てない状態が続いた。
 昨年まで、日本人大リーガーは先発投手の傑出した働きで存在感を示していた。しかし、今季前半はそれが壊滅状態に陥ったため、彼らの存在感が極めて希薄な印象を受けた。それでも期待を大きく上回る働きをした選手は存在する。

■今季前半のMVP
候補者:青木宣親、田澤純一
受賞者:青木宣親
 今季前半、日本人大リーガーの中で給料以上の働きをしたのは2人しかいない。青木宣親と田澤純一である。
 青木は年俸400万ドル(4億8000万円)なので、前半のサラリーは200万ドル(2億4000万円)だが、選手の貢献度を示すWARは前半戦終了時1.7で680万ドル(8億2000万円)相当の働きをした。
 リードオフマンとしての働きも見事で、出塁率(3割8分2厘)はナ・リーグの一番打者でダントツの1位。三振をしない能力はメジャー全体で1、2を争うレベルだ。
 ポジションがライトからレフトに変わったが、守備面での活躍も目立ち、走塁面でもチームでただ一人盗塁を二桁マーク。6月下旬に死球を手に受けて骨折し現在はDL入りしているが、ファンの評価も高く、オールスター投票ではケガの直前まで外野手部門の3位に食い込み、ケガさえなければオールスターに出場していた可能性もあった。
 田澤純一は年俸が225万ドル(2億7000万円)なので、前半のサラリーは112.5万ドル(1億3500万円)となるが、400万ドル(4億8000万円)相当の働きと評価されている。今季も名門レッドソックスのトップ・セットアッパーとして機能しており、13ホールドはリーグ7位の数字だ。
 ただ大事なゲームで3度リリーフに失敗していること、同地区のブルージェイズに相変わらず弱く、今季もメッタ打ちにあっていることなど、ハッキリしたマイナス要素もある。それを考慮すれば、前半戦のMVPは青木宣親しかいない。

■LVP
候補者:ダルビッシュ有、岩隈久志、田中将大、イチロー、藤川球児
受賞者:岩隈久志
 今季前半、期待を大きく裏切った選手はこの5人となるが、イチローと藤川は低年俸なのでチームに与えたダメージはそう大きくない。LVPの候補は超高額年俸の田中、高額年俸のダル、岩隈の3人に絞られる。
 このうち、田中は全体からみれば期待外れではあるが、4月中旬から下旬にかけてと6月前半はエースらしい投球を見せていた。
 また、ダルビッシュも投手に頻発する職業病に見舞われたのが「全休」の原因であり、すべてを自己責任とすることはできない。
 それに対し岩隈は肩の故障で約2カ月欠場したのは仕方がないにしても、登板した4試合すべてが不甲斐ない内容でことごとくチームに黒星が付いたのはいただけなかった。この岩隈の不振は地区優勝候補だったマリナーズが低迷する要因の一つになっているので、今季前半もっとも期待を裏切った選手とした。

■新人王
候補者:村田透
受賞者:なし
 巨人時代に1度も一軍登板がなかった村田透が、マイナー暮らし5年目に、打たせて取るピッチングをマスターしてインディアンズでメジャーに昇格したことは、賞賛に値する。だが、1試合限定の登板であり、結果も良くなかったので、努力賞には値するが好成績が条件になる「新人王」には合致しない。

スポーツジャーナリスト・友成那智
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。

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