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友成那智 メジャーリーグ侍「007」 「イチロー」「岩隈」「前田」「田中」今期のMVPは誰だ?

 昨季の日本人選手は故障者が続出し稼働率が大幅に低下したが、今季DL(故障者リスト)入りしたのはダルビッシュ有、上原浩治、田澤純一の3人だけで、あとの選手はフルシーズン出場。成績も年俸に見合った数字を出した者が多かった。
 その一方で期待を裏切った選手もいる。そこで今回は、日本人大リーガーの最優秀選手(MVP)と、もっとも期待を裏切った選手(LVP)を選んでみたい。

●MVP:候補者=イチロー(マーリンズ)、岩隈久志(マリナーズ)、前田健太(ドジャース)、田中将大(ヤンキース)

 イチローは今季開幕時点でピート・ローズが持つ世界最多安打記録4256本に43本、メジャー3000本安打達成に65本となっていた。しかし、メジャーの野手で最高齢の42歳になっていたことや、昨季、低レベルな成績に終わったことで、ローズの記録を超えることは可能でも、シーズン中にメジャー3000本に届くかどうかは疑問視されていた。
 しかもマ軍は若く優秀な外野手が三つのレギュラーポジションを固めているため、イチローが3000本達成に必要な打席数を確保するのは至難と思われた。
 しかし、オフに下半身の強化に取り組んだこと、バットを立てて構える打撃フォームから寝かせて構えるスタイルに変えたことなどが功を奏し、イチローは序盤から強烈なライナー性のヒットを連発。それによって出場機会をどんどん増やしていった。
 その結果、早くも6月中旬にローズの4256本に並び、8月上旬には3000本安打を達成した。
 シーズン終盤に息切れし6年ぶりの「打率3割」はならなかったが、守備、走塁面では全盛期に近いハイパフォーマンスを披露。ファンに与えたインパクトは日本人大リーガーの中でも屈指のレベルだった。

 岩隈久志と前田健太は日本人メジャーリーガーで最多の16勝をマーク。どちらも、一度も故障することなく、チームで唯一フルシーズン投げ抜いたことも光る。
 ただ16勝の中身が、やや薄い点も共通している。岩隈はシーズン前半、失点が多かったにもかかわらず、打線の強力な得点援護で勝ち星が付くケースが多かった。マエケンも対戦する相手打線が3巡目に入ると急に打たれ出すことが多く、6回終了まで持たずに降板するケースが多かった。そのため、岩隈もマエケンも日本人投手の中で際立った働きをした印象は薄い。

 田中将大はシーズン前半、打たせて取るピッチングに徹して大半の試合で先発の責任を果たしたものの、味方打線の貧打に泣かされ勝ち星がなかなか付かなかった。シーズン後半はツーシーム主体からフォーム主体に切り替えてピッチングをさらにレベルアップさせたが、7月末の大型トレード後にリリーフ陣が一気に弱体化。リードを守れず勝ち星に恵まれないままだった。
 それでも表にあるように貢献ポイントであるWARはリーグ屈指のレベルであり、シーズン終盤には、一時的に防御率がリーグ1位になる場面もあった。そうした活躍のインパクトの大きさは岩隈やマエケンの比ではなかった。

 こうして見ていくと最優秀選手にふさわしいのは田中とイチローの2人となる。この2人を比較した場合、田中は名門チームの「投の主役」としてフルに機能し、ヤンキースを23年ぶりの負け越しから救う大きな働きをした。一方のイチローは二つの金字塔を打ち立て、42歳とは思えぬ活躍も見せたが、チームの浮沈に関わるレベルの働きだったとは言えず田中には及ばない。
 今季の日本人最優秀選手は田中将大で決まりだ。

●LVP:候補者=田澤純一(レッドソックス)、青木宣親(マリナーズ)

 田澤純一は2013年にブレイクしたあと、年を追うごとに成績が低下。シーズン序盤は完璧なピッチングを見せるのに、中盤以降息切れして防御率が悪くなるというパターンが続いた。
 そこでシーズン終了後にFA権を得る今季は、中盤以降にスタミナ切れが起きないことをアピールして複数年契約をゲットしたいところだった。しかし、結果は最悪。序盤はこれまで以上に好調だったのに、中盤以降はこれまで以上に打ち込まれた。8月7日以降は6試合で4本も一発を食らい10失点する荒れようで、負け試合のリリーフに降格。10月にはポストシーズンのメンバーからも外された。
 期待を裏切ったという点では、青木宣親も2度マイナー落ちしているので、LVP候補になりうるが、終盤、ヒットを量産して打率、出塁率を例年並みの数字に近づけてシーズンを終えている。それを考えれば、もっとも期待を裏切った選手は田澤純一で決まりだ。

ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。

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