「方違(かたたがえ)」という考え方がある。凶方とされた方角にある目的地へ無事にたどり着くための呪術的手段で、陰陽道などの普及により広く浸透したものだ。その名残だろう、今でも方角を気にする習慣は深い。方違神社は古来、摂津・河内・和泉の三国の境界に位置したことから“方位のない清地”とされ、境内の土を菰(こも)の葉で巻いた粽は、方位における災いを除けると信仰を集めた。由来は神功皇后の神話にまで遡る。
粽祭では当日のみ、菰の葉と埴土(はにつち)を使った古来そのままの本粽が授与される。手作りのため奉製量も少なく、境内は早くから並ぶ氏子たちでいっぱい。本粽も、一年中授与される紙ちまき同様、玄関や方位の気になる場所に貼付ける。
社殿での祭典、粽授与の後も神事は続く。まずは、忌火で沸かされた湯の中に米・酒・塩を入れ、それを巫女が両手に持った笹の束でふりまいて無病息災を祈願する湯神楽神事。お神楽にあわせたリズミカルな手さばきは見事な限り。この湯にかかると良いとされ、参拝者の多くはカメラを庇いながらも身を乗り出す。
やがて真っ赤な鼻高面に赤い装束の導き役らを先頭に、天秤棒を担いだ3〜5歳女児のお稚児さんが現れる。清めの砂を天秤棒で運ぶ御砂持神事だ。神の依り代による奉仕をもって、全ての神事は完了となる。
また当社は秋祭りのふとん太鼓でも有名。泉州地方独特の派手な祭礼も見逃せない。
(写真「粽祭で授与される『本粽』」)
神社ライター 宮家美樹