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映画「彼女について知ることのすべて」インタビュー

 佐藤正午原作を映画化した「彼女について知ることのすべて」が5月19日よりユーロスペースで2週間限定で公開される。同作品は地方都市を舞台に性と暴力、男と女、恋人たちの傷跡と切ない絆を描いた激しく切ないラブストーリー。そんな同映画で監督をつとめ井土紀州氏と主演の笹峯愛にインタビュー。作品について、話を聞いた。

 −−映画化の構想はいつ頃からあったのですか?

 −−井土 原作の小説が出版された1994年に、僕のまわりの友達からも、「あの小説、いいよね」と話題になっていました。「この作品は映画になるかもしれない」と思い始めたのは2000年くらいだったと思います。

 −−原作のどのあたりに魅かれたのですか?

 井土 原作者の佐藤正午さんは恋愛小説の名人であると思うんです。単なる恋愛ではなく、性を通じた男女の姿である“性愛”が描かれています。またこの作品からは、男の視点から見て、後悔したり、くよくよしたりする男の優柔不断さや迷いがリアルに感じることができたんですよ。なので、いいなと思いました。

 −−原作があるものを映画化するということで、意識したことはありますか?

井土 原作が持っているエッセンスを汲みつくすことを考えました。また、原作は長い小説なので、映像化 する上で何をどう取捨選択していくかに腐心しました。

 −−続いて笹峯さんにお話を聞きたいと思います。主演のお話をもらった時の率直な感想は?

 笹峯 ありがたいお話だと思いました。映画をずっとやりたいと思っていましたので、映画作品に関われるというのは素直にうれしいと思いました。

 −−演じられた遠沢メイという女性は笹峯さんから見てどんな女性ですか?

 笹峯 妖艶で悪女という感じだと思うのですが、そういう部分がまったく自分にないので…。まあでも、印象で言ってしまえば、遠沢メイという女は、女性ならば嫌いですよね(笑)。こんな女に男は魅かれるのかと。実際、こんな女に魅かれた男子がいたら、私は説教しますけどね(笑)。

 井土 でもね、僕は原作のそこが好きだったんですよ。女に嫌われる女というところに、このストーリーの本質があると思うんですよ。

 −−そんな遠沢メイを演じてもらうにあたって、監督から笹峯さんにお願いしたことはありますか?

 井土 色々、細かいことはありますが、一番は存在感です。フィクションの中の存在をどうやって成立させられるかという点ですね。あとは笹峯さんの素が出ないように注意してもらいました(笑)。笹峯さんのサバサバして性格の良いところが出てしまうとメイの人物像がブレるので。

 −−映画の中での過激な濡れ場シーンも作品の魅力になっていると思いますが。

 井土 笹峯さんと話し合ってつくっていきました。僕自身はノープランに近かったのですが、最初の濡れ場は女性が見て、女性が良いと思えるようなベッドシーンにしたいと。次の濡れ場はあまり細かいことを決めずに勢いでやってみようと。そして、最後はクライマックスでもあるので、ここは男性向けにしようと話し合いました。

 −−男性向け、女性向けの濡れ場の違いとは?

 笹峯 女性向けと考えて濡れ場は、少女マンガと言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、ロマンチックで恋愛の延長にある女の子がのぞむ愛のカタチのような雰囲気にしたいと思いました。男性向けと考えて濡れ場は、激しくすべてをさらけだした二人のシーンだったと思います。

 −−濡れ場のシーンは長回しが多かったですね。

 井土 濡れ場は、ある程度、お任せするしかないところがあります。演じている時に僕が入りこんでいって、「違う! もっと足をこうだ!」みたいに演出されても、やりにくいと思うんで(笑)。

 −−濡れ場を演じて、笹峯さんが感じたことは?

 笹峯 私は今回がはじめての濡れ場でしたが、お芝居としてすっごく、やりやすい芝居だなと思いました。お芝居をするためには、すべてをさらけ出さなければいけないのに、「こう見せたい」とか「こう演じたい」と思ってしまいます。でも、濡れ場って実際に肉体をさらけだしているので、すっごく楽でした。別に露出狂なわけではないんですけどね(笑)。他のシーンでもこんな風に演じることができたら、いいのになあと濡れ場を経験して思いました。

 −−最後に見て頂く、ファンの方に一言、お願いします。

 笹峯 みんなでつくった作品が井土紀州ワールドに染まっているので、そこを楽しんで頂きたいと思います。私もとてもいい勉強をさせて頂きました。

 井土 男と女が出会ってセックスするって、ある意味、興奮だったり喜びだったりがあると思います。それが映画の後半には変わっていく。男と女が体を重ねることがせつなさになっていく。僕は今まで若い世代に向けて映画をつくっていました。ただ、この映画はいよいよ自分が中年に差し掛かったんだなあと。忘れていた青春が突然やってくるような映画になっています。“大人”に見て頂くと感じるところがあると思っています。はじめて「大人の映画」を撮ったような気がしています。まだまだ甘いですけどね(笑)。

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