「以前は検察と裁判官の間で通じる“暗黙のルール”がありましたが、その範疇にない一般市民である裁判員は、特に自白がない事件での状況証拠について見方が厳しい傾向にあります。検察サイドが、そのあたりに対して抑制的になっているのが原因でしょう」
その一方で、最高裁判所の付属機関である司法研修所の調査では、死刑判決の割合が戦後の混乱期並みの“乱発傾向”にあることを指摘している。この調査の論点も裁判員制度だ。
「同調査は、終戦直後から裁判員裁判導入までの1946〜2009年を対象に、起訴人数に対して1審で死刑判決を受けた人数の割合を10年ごとに調査しています。殺人事件では'46〜'54年が1.02%でしたが、'55〜'94年の間は0.25%前後で推移。'95〜'04年に0.63%、'05年以降は0.99%と、20年前の4倍となっています。起訴人数に対する割合ですから、はっきりと厳罰化の傾向にあるのが、この数字から読み取れると思います」(前出・関係者)
検察が殺人での起訴に慎重になったのは、死刑廃止の世界の潮流からすればごく自然な流れといえるが、日本人のおよそ9割は、死刑制度を必要だと認めているという調査結果もある。
“復讐する権利”が許されない以上、やはり死刑存続が日本の総意のようだ。