東京・両国国技館で行われていた初場所は、伏兵の関脇玉鷲(34=片男波部屋)の初優勝で幕を閉じた。
初日から10連勝し、12日目にも優勝を決めてしまうのでは、と見られていた横綱白鵬(33)が終盤、まさかの3連敗。14日目に「(足が)痛くて寝れない」と訴えて休場し、混沌となった。大関にいたっても勝ち越すのが精いっぱいで、その昔クンロク大関と呼ばれていた人気力士を思い出す。
突如、優勝候補に浮上した玉鷲は、14日目、千秋楽と、しびれるようなプレッシャーに打ち勝った。それだけに、インタビューでは何度も声を詰まらせた。
「(遠藤に)勝てば優勝という場面だったので、頭は真っ白だったけど、がんばりました。土俵下(審判委員席)に師匠(片男波親方・元関脇玉春日)がいたので、余計うれしかった。今日、第2子が生まれました。男の子です。最高です」
荒々しい相撲っぷりとは対照的に、ケーキ作りや小物作りが趣味で、「2歳の長男と公園を散歩するのが最大の息抜き」という玉鷲ならではの感動的なコメントだったが、大相撲関係者は申し合わせたように複雑な表情だった。
「これからの大相撲界のことを考えると、史上2番目の34歳2カ月という高齢力士の優勝は素直に喜べないんですよ」(担当記者)
今場所も前売り券は即日完売し、15日間大入り満員だった。ファンのお目当ては、唯一の日本人横綱・稀勢の里だったが、初日から3連敗した揚げ句、ついに引退してしまった。
「稀勢に代わる目玉がいないんですよ。残る2人の横綱、白鵬と鶴竜も33歳ですし、大関陣を見渡しても高安以外は30代。世代交代は待ったなしで、もしかすると1年後は誰も残っていないかもしれません。2年前に稀勢の里が横綱になって以降、ずっと大入り満員が続いていますが、来場所はどうなることやら…。優勝した玉鷲には悪いが、とてもその器ではありませんからね」(同)
八角理事長は、貴景勝、御嶽海、北勝富士ら、若手の成長を期待しているが、彼らが稀勢の里の抜けた穴を埋めるのも、まだまだ時間がかかりそうだ。白鵬が逃げ出して本命がいなくなった優勝争いと同じように、大相撲人気もさっぱり先が見えなくなってきた。
世代交代「待ったなし!」