本紙記者に中松氏から怒りの電話があったのは25日。しかし「ビッグニュースがある。首相就任後初の大ポカです」などと一向にらちが明かないため、東京・世田谷の事務所に出向いた。
「ようこそいらっしゃいました」と中松氏はニッコリ。なんだ、もう怒っていないじゃないか…と思った矢先、机の上にあった衝撃写真が目に飛び込んできた。若き日の中松氏がパイレーツのユニホームに袖を通し、大リーグのマウンドに立つ雄姿だった。
「首相は東大の後輩なのに水くさい。桑田さんに始球式のアドバイスを求めるのは見当違いです。なぜ僕に聞きに来ないのか? 日本人で初めてパイレーツのマウンドに立ったのは僕ですからね。ウフフ」
中松氏は1990年、約260作品を集めて当地で開催された「世界発明コンテスト」でグランプリを受賞。その栄誉を称えられ、同年5月6日に当時のブッシュ大統領に代わってパイレーツのデーゲームで始球式を行ったという。
それでも半信半疑の記者に、複数枚の写真や贈呈されたユニホーム、現地でオンエアされたニュース映像のVTRをこれでもかと見せつけた。投球前に右腕をぐるんぐるんと振り回し、直球一発勝負で見事ストライク。観客席の女性ファンから「パイレーツの投手にスカウトしたいわ」と絶賛されていた。
「僕は東大で野球をやってたから首相よりは慣れていた。魔球を投げてもよかったけど、始球式は観客をいかに喜ばせるかが大事なんです。山なりや暴投は論外。ボソッと投げてもダメ。首相には、日本を背負う政治家として、観客を総立ちさせる演出でアメリカ国民をひきつけてほしい。そのためにも、まず僕にアドバイスを求めるべきでしたね」
首相とは不思議な縁がある。パイレーツの始球式に臨んだのが共に62歳の年だったことや、東大工学部出身であること。首相が留学した米スタンフォード大で教べんをとったこともあるという。
すべて説明してすっきりしたのか、「首相は僕が第1号と知らなかったのかな。挨拶はなかったけど、東大の後輩だし、まじめだし、ほかの政治家と違ってかわいいと思わないでもない。同じ理系の頭脳だから期待もしている。あとは内閣改造のときに文部科学相あたりで入閣要請してくれば大したもんだ。ワハハ」と怪気炎を上げた。
先の衆院選では、幸福実現党から比例東京ブロック2位で立候補して惨敗した中松氏。立ち直りは早かった。
◎今朝始球式 首相ワンバウンド
パイレーツの本拠地PNCパークで25日夜、パ軍のユニホームをまとった鳩山首相は観客の大声援に送られて始球式のマウンドを踏んだ。対戦相手は黒田博樹投手(元広島)のいるドジャース。
大きく振りかぶって投げたのは予告通りストレート。ホームプレートを通過してからワンバウンドでキャッチャーミットに収まり、スタジアムに拍手が沸き起こった。