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年末年始レポート 長嶋茂雄と野村克也「犬猿の2人」似通う晩年〈スポーツジャーナリスト・吉見健明〉(2)

 一方、長嶋茂雄はどうか。実は、長嶋邸は野村邸から徒歩で約15分しか離れていない田園調布にある。
 '04年3月に脳梗塞で倒れた長嶋は、退院後から休むことなくリハビリを続けている。私のリハビリ視察も13年目となり、4172日(1月12日時点)となった。
 長嶋のリハビリを追い続けてきた私は明治神宮で初詣してから、その足で長嶋邸近くの高台で初日の出を見るのを恒例にしている。
 大晦日から元旦の長嶋は、12年間ほとんど毎日付き添うS介護師と一緒に過ごす。そして、2日は必ず千葉・成田山へ向かう。今年は6日早朝からいつものように都内の自然教育園でのリハビリでスタートした。

 昨年12月26日月曜日。毎週月曜日のリハビリ場所は自宅からも近い多摩川台公園だ。午前7時5分、長嶋を乗せたダークグレー色のレクサスが到着した。
 月曜日は球団広報とS介護師が付き添う。私はと言えば、電車とリハビリ取材を支援してくれる後輩からプレゼントされた自転車を併用して、豊島区から片道1時間40分かけての“遠征”となる。
 長嶋は同公園内を10回往復。その後、勾配のある坂道を自宅まで一気に登るのは見慣れた光景だ。
 その間、近所の年配の男性とにこやかに話しながら歩くこともある。また、通勤通学の人たちにも気軽に「おはよう!」と元気一杯に声を掛ける。自宅でのリハビリでは、サッカーボールを不自由な右手で投げられるようになったとも聞く。
 「明るいね。長嶋さんと話しをすると自然に楽しくなるね。力がもらえる」

 毎週木曜日に訪れる新宿区内の医療センターでは、機械を使ってリハビリに励む長嶋を見守る患者らも大喜びだ。
 「ここ2年間は、次女の三奈ちゃんが田園調布の長嶋邸に頻繁に来ている。S介護師を長嶋さんの専属でつけたのも三奈ちゃんですよ」(長嶋氏の側近)
 長男の一茂と三奈さんが仲違いしていると報じられてから久しい。ちなみに、私の視察では、一茂は長嶋のリハビリに1度だけ付き添ったことはあるが、ほとんど見掛けたことがない。
 「一茂と三奈ちゃんはまだ仲直りしていません。今は、三奈ちゃんが長嶋さんのスケジュール調整などの面倒を見ています」(同)
 もっとも、巨人の宮崎キャンプや公式行事参加など、表舞台に立つことが多くなったことで、早朝のリハビリをやむなく休むことはある。しかし、1年365日、リハビリに取り組む基本サイクルはまったく変わっていない。

 自らの行動で多くのファンに夢を与え続ける長嶋は現役時代と同じだ。野球理論とボヤキが健在の野村も現役そのもの。
 2人の姿を見ていると、生きザマはまったく違っているが、野球を愛する心と大病を患い闘病する姿は妙に似ているような気がしてならない。
【敬称略】

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