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「国はアテにできない!」 ローカルアベノミクス地方創生悲喜交々の現場(2)

 だが、地方自治に詳しい専門家はこう警告する。
 「これは成功例。しかしながら、成功事例は、時に“政策の道具”として扱われることもある。ローカル・アベノミクスに期待しながらも最終突破口が見いだせずにいる地域もあるのです。杜撰な行政で財政破綻して財政再生団体となっている北海道の夕張市は、その最たる自治体でしょう」

 夕張市はこれまで100億円近くを返済したが、それでも約255億円の残債がある。260人いた職員は100人と大幅カット、また自ら辞める職員も後を絶たない。
 「大幅給与カットで生涯年収が少なくなるのと、退職後の年金が激減するため、やむを得ず辞める職員が増えました」(地元紙記者)

 住民には高い税金、公共施設の閉鎖、病院は診療所になり、171あったベッド数はたった19になるなど、何から何までキツキツの運営。それに嫌気が差し、かつて炭鉱全盛のころの人口12万人が今や9000人。若者を中心に流出が続き、高齢化も進んでいる。
 「夕張市には映画祭も2玉300万円の夕張メロンもある。スキー場は外国人に人気があり、観光客も増えてはいる。しかし、なかなか大幅な税収アップの決め手にはなりません。何しろ夕張メロンも初期投資で数千万単位のコストが掛かり、新規就労者が増えず、さらに後継者不足などで作付けが減っている状況です」(夕張市のまちづくり企画室担当職員)

 そうした中、最後の活路とも思える事業が進み始めている。炭鉱炭層から出るメタンガスを採掘する話だ。
 「炭層メタン(CBM)は今年9月に試掘に入り、採算が合えば来年からテスト生産が可能です。夕張市の地下炭鉱には市の4500世帯が1500年にわたり使用できる約77億立方メートルのCBMが眠るといわれています。掘り出したCBMを市内の進出企業や再編した住宅に安くエネルギー供給できれば、企業誘致や人口増にもつながる。共同事業体に市有地を提供できるし、メロン農家にも安価なエネルギーを提供することもできます」(同)

 今、夕張市の高齢化率は48%と全国一。これは2060年の日本が到達すると試算されている割合だ。鈴木直道市長は、かつてこう述べていた。
 「夕張市がこの危機を乗り越え、新しい方向性を示すことができれば、それは日本の2060年のためにも役立つことになる」

 地方は国をアテにするだけでは前に進めない。

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