A:メキシコは1年中、乾燥した気候でしょう。それに比べて、日本の梅雨から夏にかけての湿度の高さは世界有数です。メキシコの気候に慣れている体にとっては、この時期の日本の湿気はとても辛いでしょう。
梅雨から夏にかけては、体調を崩す二つの要因があります。暑さと湿気です。暑さは熱中症を引き起こし、湿気は胃腸の働きを低下させます。現代ではさらに、冷房による冷えが加わっています。冷えは全身の血行を悪くします。
夏バテは自然の炎暑に体が負けて起こりますが、冷房が十分でなかった昔よりも、むしろ近年のほうが目立って増えています。
ところで、陰暦5月5日は端午の節句です。西暦の現在、5月5日は子供の日として祝日です。端午の節句には昔から菖蒲湯に入る習慣がありますが、生薬としての菖蒲には、湿気を取って胃腸をよくする働きがあるといわれています。
陰暦の5月5日は、現在の暦では6月半ば(今年は6月13日)、つまり梅雨間近です。だから、端午の節句の菖蒲湯は、「これからの季節は湿気に気をつけなさい」との警告で、そこに意味があります。
●熱中症や夏バテの予防に役立つ漢方薬
夏は熱中症にならないように気をつけなければなりませんが、気温が高いだけでなく、併せて湿度も高いことが、熱中症を引き起こしやすいのです。
東洋医学には、熱中症予防の対策に役立つ漢方薬があります。その代表的なものが「白虎加人参湯」です。この漢方薬に配合されている生薬の石膏には熱を取る作用があります。白虎加人参湯をイオン飲料や経口保水液に入れると、最強の熱中症予防薬となります。
気温も湿度も高いと、汗をかき、体内から水分が失われます。ナトリウムなどの電解質も汗とともに出ますが、それを補うのにイオン飲料や経口保水液は役立ちます。
白虎加人参湯はエキス剤があり、健康保険適用になっていますし、薬局でも販売しています。顆粒の場合は2袋を500ミリリットルのイオン飲料や経口保水液に入れるとよいでしょう。効果を得るコツは、汗をかくたびに少しずつ飲むこと。汗をかく前に飲んでも、さほど効果は期待できません。
さらに、夏バテ時に用いる漢方薬に「清暑益気湯」があります。予防的に服用することで、夏バテ対策になります。
三浦於菟氏(吉祥寺東方医院院長)
東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。日本医科大学附属病院東洋医学科助教授を経て現職。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。