顧客ニーズや流行を基に自社で商品を企画し、国内の縫製工場などに生産を委託、商品を全量買い取る。製造小売り(SPA)と呼ばれる手法で、同社は「アパレルメーカーの商品に比べて利益率が10ポイント程度向上する」と強調する。
しかし、業界関係者は「世紀の大博打。大西洋社長の命取りになりかねない」と指摘する。
「アパレルメーカーからの供給であれば、売れ残った商品が返品できる。ところが、SPAであれば在庫を抱え込むリスクを負う。アパレルを通さないから利益率がアップするといっても“商品がフル回転すれば…”の条件が付く。ライバル各社がSPAに踏み込めなかった最大の理由が、この在庫リスクなのです」
業界最大手の同社のこと。そんな事情は先刻承知に決まっている。太平社長が強くアクセルを踏む理由は何なのか。
「三越伊勢丹は今年の夏、高島屋や阪急などに対抗してセールの時期を遅らせた。本邦初というべきセールの後ろ倒しで世間の注目を集めたのですが、結果は散々だった。これに堪りかねた大手アパレルは、冬セールの後ろ倒し(来年1月18日実施)に反旗を翻し、元旦もしくは1月2日から始まるライバルデパートの冬セールに歩調を合わせることになった。大西社長とすれば、アパレルからハシゴを外されたようなもの。そこで“脱アパレル宣言”ともいうべきSPAに舵を切ったのです」
果たして吉と出るか、凶と出るか。