「787は一部から“電気飛行機”と呼ばれているように電気のかたまりで、開発段階から電気系統の不具合が指摘されていた。それでも日本のメーカーが35%の部品製造を手掛けたことから“準国産機”とされ、JALやANAが積極的に購入したのです。カタログ価格で1機250億円(機種によって異なる)と安くはないのですが、格安航空のLCCに対抗する切り札との位置付けだったのです」(航空アナリスト)
ボーイング787型機は現在50機しかなく、うちANAが17機、JALが7機と、全体の半分近くを日本勢が占めている。保有機が多いからといえばそれまでだが、他の航空会社はトラブルに無縁で、日本の航空会社にだけ突出するのも奇妙な話だ。
第3の謎は、ボーイングのお膝元である米国の対応である。一連のトラブルを受け、FAAはボーイング787型機の運航禁止を命じた。米航空当局が特定の旅客機の運航を禁じたのは、1979年にアメリカン航空のDC10がエンジン脱落で墜落、273人が死亡した大惨事以来、実に34年ぶりのことだ。
ところが事態を深刻に受け止めたはずのウエルタFAA長官は、787型機について「安全な旅客機と確信している」と擁護。ラフード運輸長官に至っては「安全を“1000%”確認するまで飛行させることはない」と運航にレッドカードを突きつける一方で、「飛行には何ら問題がない」と二枚舌を巧みに使い分けた。ボーイングのマックナーニCEOも、相次ぐトラブルを謝罪しながら「安全ということには自信がある」と開き直っている。
その魂胆のウラは−−。
「米当局は、何があっても軍需産業の中核を担うボーイングを火ダルマにしたくないのです。もしトラブルの元凶がボーイングにあったとなれば、経営の根幹が揺らぎ、米国の軍需産業を直撃する。だからトラブルがあったにせよ、787の安全性だけは政府のメンツをかけてトコトン守り抜く。そのためには手段を問いません。当初、GSユアサが集中砲火を浴びそうになったのは、ボーイングを守り抜くために米国が繰り出した“先制アタック”だったといえば、分かりやすい話なのです」(情報筋)
国交省がFAAに対し、「次はボーイング社を立ち入り検査しましょう」と進言できれば、少しは原因究明に近づくのかもしれないが、それこそ“1000%”有り得ないだろう。