「姫騎士オフライン」はボーカルのエリカ姫、ギターのイクト、ベースのユキ、ドラムのケリーの4人で構成されており、4人全員が長年アキバと関わりのある生粋のオタク。バンドリーダーであるイクトは自身のバンド以外にもサウンドプロデユーサーとして楽曲を提供、メイド喫茶からスカウトされたエリカ姫以外のメンバー全員が長年インディーズでバンド活動をしてきた経歴を持つ。なぜこれほど実力者揃いのメンツが集まって活動をしているかというと、「基本皆オタクで、ゲームやアニメの話も気楽にできて楽しいから」とのこと。音楽活動以外で話せる話題が多いのは、他のバンドにはあまりない魅力であろう。打ち上げなども楽しそうだ。
ライブなどでの、お客との関わりもアキバ系バンドは特殊らしい。「アキバ系バンドは他のジャンルのバンドと違い定期的にライブ行うホームと呼べるライブハウスが有りません。代わりにイベント主催者がいるオタ系イベントに呼ばれることが多いです」(イクト)。インディーズバンドでは、同じ系統のバンドがいくつか集まり、ライブを共催するのが主流だが、このジャンルのバンドはアキバ系アイドルなどと一緒のライブに出演することが多いそうだ。これではバンド活動として不便な部分が多いのでは、と思ってしまうが、必ずしもそうではないらしい。「普通のバンドにはない、お客さんとの近さがあります」(エリカ姫)。一緒にオタ芸で盛り上がったりして、客との一体感が強く、ノリの良い楽しいライブを演出し易いそうだ。それに加えて、他のアイドルの音源がスピーカーなのに対し、バンドは楽器の生音。その違いによりバンドならではの音の心地良さもスパイスでき、アキバ系音楽をバンドでやる強みは十分にあるとのこと。
またアキバ系バンドは、同人音楽として同人ショップでCDを販売したり、オタクの動画サイト利用率を活かし、ニコニコ動画やユーチューブで作成したPVをアップロードするなど、宣伝の手段も多彩だ。最近の動画サイトでの同人音楽人気は、ブームを超えて、もはや定着している。同人発のバンドがメジャーデビューを果たし、音楽ランキングの上位に入ることも珍しくなくなっている。「海外でもこういう文化は受け入れられていて、特に“アキバ”“萌え”などのブランドを全面に押し出したものの人気はむしろ海外の方が関心が強い」と二人も語っていたが、これほど自由にプロモーション展開をできる強みは、最近低迷期に入って久しい音楽業界を渡っていくための重要な武器になりそうだ。とはいっても、やっぱりイベントなどの“手売り”でお客の気持ちが伝わるのが一番嬉しいのは変わらないそうだが。
今月24日にアキバ系音楽の祭典“萌えフェス 2010〜秋の陣〜”が、TOKYO FMホールで行われる。このフェスで桃井はるこやLittle Nonなど、人気の歌手やバンドと一緒に姫騎士オフラインの参加も決まっている。「やがてはLittle Nonさんみたいにアニメやゲームの主題歌を歌って、海外でも知られるバンドになりたい」(イクト)と話していたが、今回のフェスは、その道に近づくための重要なイベントになりそうだ。姫騎士オフラインはアップテンポでノリやすい曲が多いので、会場をおおいに盛り上げることだろう。興味を持った人は是非チケットを購入して、当日にTOKYO FMホールに足を運んでもらいたい。(斎藤雅道)