大相撲春場所が東京・両国国技館で5月8日から始まったが、今場所もまた人気は上々。37回目の優勝を目指す横綱白鵬(31)を筆頭に、成績次第では横綱昇進の声も掛かる大関稀勢の里(29)らのツバぜり合いが見どころ。
しかし、新十両ながら、上位陣に負けないほど人気急上昇中の力士がいる。初土俵から7場所という、史上4位タイのスピードで十両に昇進してきた木瀬部屋所属の宇良(23)だ。
宇良は、身長1メートル73センチ、体重127キロと体は決して大きくないが、取り口は豪快そのもので、ファンの注目を集めている。中でも関西学院大時代、奇手の“居反り”を得意にいていたことで、その名を知られていた。
居反りは相手のフトコロに潜り込み、両ひざを抱え上げて後ろに反って倒す大ワザで、昭和30年に決まり手が制定されて以来、幕内で二度、十両で一度しか出ていない珍手。最も新しいのは、23年前の平成5年初場所で、十両の智ノ花が花ノ国を相手に決めている。
「稽古場では3回も決めているそうです。3月末の新十両会見でも『相手が大きい十両の方が出やすくなる』と自信を見せていました。木瀬親方(元幕内肥後ノ海)も『居反りはもともと逆転のワザだけど、宇良の居反りは攻めのワザ。それ以外にも多彩なワザの持ち主で、見ていて面白い』と売り込んでいます」(担当記者)
この奇手のおかげで、宇良人気はうなぎ上り。化粧まわしも母校の京都・鳥羽高校や関学大などから3本も贈られた。新調した締め込みもひと際目立つピンク色で、異能力士ぶりに花を添えている。
「ファンばかりでなく、力士仲間からも注目の的ですよ。ワザ師ぶりではずっと先輩の安美錦も、『オレも居反りを見たい』と言って、4月末の稽古総見のときも、『やれ、やれ』と、けしかけていました。楽しみな力士が出てきましたね」(協会関係者)
これとまったく対照的なのが、これまで人気が大きく先行していた遠藤(25)だ。2場所ぶりに幕内に復帰したものの、場所前に再び古傷の左ひざに痛みが出て稽古ができない日が続き、終始憂い顔だったのが気掛かりだ。
勝てなければ人気も落ちる。明らかに遠藤への声援は小さくなった。