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アルプスの少女ハイジに続編! 様々な顔を持つハイジとは

 世界的に有名な児童文学作品『アルプスの少女ハイジ』。このお話は日本でもアニメ化され、現在でもスイスの山奥にはヤギと駆け回る可愛い少女と気難しそうなおじいさんがいるのではないかと考える人間がいるかもしれないほど、大きな影響を与えている(実は筆者は幼い頃、スイスにはそんな風景が広がっていると信じていた)。

 日本で知られているアニメ『アルプスの少女ハイジ』は、山でおじいさんと幸せに暮らしていたハイジが叔母さんにドイツのフランクフルトまで連れてゆかれ、足の悪いクララやクララの父ゼーゼマンとおばあさんに出会う。しかし山に慣れ親しんだハイジは都会暮らしに次第に心と体を病んでゆき、結局アルプスの山へと戻ることとなる。そして今度は反対にクララがハイジに会うためや療養のためにアルプスを訪れ、ハイジやおじいさん、ペーターのおかげで己の足で立てるようになり、クララが山を去るところでアニメは終わっている。

 だが、世の中には『アルプスの少女ハイジ』の続編が多数存在するという。有名なものでいうと『ハイジの青春 アルプスを越えて』であろう。この本では第一次世界大戦中のスイスとイタリアが舞台となっている。14歳になったハイジはイタリアの寄宿学校に入学していたのだが、戦争が始まり学校が軍に接収された。そして同級生たちと孤児院に入れられたハイジは、付属されていた工場で酷使されることとなり、その生活を苦に感じたハイジ達はスイスへ脱走を計画するといった内容である。また他にもハイジとペーターが結婚して、一人の女の子を引き取る『ハイジのこどもたち』、クララの勧めによって寄宿学校へと入学する14歳のハイジを描いた『それからのハイジ』といったものまであるようだ。

 実はこれらの続編は全て、『アルプスの少女ハイジ』の作者であるスイスの作家、ヨハンナ・シュピリが書いたものではない。シュピリが書いたハイジは、アニメと同じ部分で終わっており、それより後のエピソードは、殆どが『アルプスの少女ハイジ』に影響を受けた別の作家によって書かれたものなのである。特に『ハイジの青春 アルプスを超えて』は読んでみれば分かるのだが、明らかに『アルプスの少女ハイジ』とは雰囲気などが異なる。

 しかし2010年にはいってから、『アルプスの少女ハイジ』そのものに盗作疑惑がかけられるようになった。スイスのメディアによると、『アルプスの少女ハイジ』が発表される50年程前に、別のドイツ人作家が書いた作品『アルプスの少女アデレード』が発表されており、アルプスに祖父と暮らしていた少女が外国の都会に引っ越さなければなくなる筋書きなどや、使われている文章が酷似しているとドイツの若手文学研究者、ペーター・ビュトルナーが指摘した。それにより、ドイツやスイスは当然のこと、日本を含めた世界各国で大きなニュースとなっている。

 様々な作家により今までインスパイアされてきた『アルプスの少女ハイジ』。一部では「ハイジの神話」とまで謳われた名作が盗作であったとは、非常に皮肉な話である。

(山口敏太郎事務所)

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