NHK経営委員会の新しい委員長に、ANA総合研究所の会長で、委員長職務代行者を務める浜田健一郎氏が9月半ばに就任した。
今年5月に辞任した數土(すど)文夫前委員長の後任について、委員による互選をおこなったものである。
ただ、こんな声も聞かれる。
「數土さんが辞めてからの4カ月間、不在そのものが経営委員会運営の足を引っ張ったことは一度もない。それほどたいした役織、機関ではないというわけです」(NHK事情通)
それでも水面下では、逓信族が大物財界人を後任に起用すべく動いたようだ。しかし、數土委員長が選出された3年前と違い、ほとんどの人が断ってきたという。
「常勤なら3200万円になる報酬が、なんらかの形で非常勤に落ちれば633万円となる。それで責任ばかり背負わされ、おいしいところは一つもないのでは仕方ないでしょう」(前出・NHK事情通)
數土委員長が怒ったのも、責任だけ与えられ、権益はゼロに近い点だったことにつきよう。
「たとえば、NHK全体の人事を牛耳れるかといえばノー。後任会長の推薦もできない。経営委員会という名前からは、事業を差配できるように思われますが、あくまで名前だけなのです」(放送業界関係者)
経営委員時代の漫画家・倉田真由美氏が、連絡ミスでNHKの番組に出てしまい、そのギャラの受け取りが問題になったことがあった。
NHKからお金をもらったとなれば、経営の責任者とはいえず、管理はできないだろうという考えがあったからだ。
しかし、これもケチくさい話である。
「まずは13名いる委員を半減すべきでしょう。そして、次第になくしていく。しょせん経営委員会なんて無用の長物ですからね。スムーズにできるはずですよ」(経委ウオッチャー)
ぬるま湯になれて、常識が通用しないというのがいまのNHK。浜田新委員長も、もって1年だといわれる。
これからまた、人選はどんどん変わっていくだろう。安定的なテーマで取り組める改革案は少なくなっていくばかり。これでは不要論が出て当然である。
泥舟になりつつあるNHKの経営委員会よ、どこへいく、である。
(編集長・黒川誠一)