阪神・矢野監督が密かに目指す「読書家野球」

スポーツ 2018年11月24日 06時00分

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 阪神は「止まった時計」の針を動かすことができるのか…。
<即戦力右腕、左打ちの遊撃手、高校生左腕の獲得>
 補強ポイントとして、関西メディアが挙げていた項目で、これらは藤浪のライバルとなる先発投手の必要性と、鳥谷、能見の後継者を指していた。しかし、この見出しが新聞紙上に踊ったのは、いつかと言うと、2016年11月の秋季キャンプ中なのである。つまり、金本政権の前からチームは何も変わっていないのである。18年シーズンはメッセンジャーが故障離脱すると同時に頼りになる先発投手がいなくなり、ショートの定位置を奪った中堅、若手も現れなかった。
 前任者も苦しんだ世代交代の課題を、矢野燿大監督(50)が押しつけられたのである。

「阪神監督は関西メディアでは注目の的なので、就任以来、取材オファーが絶えません。行く先々で記者に囲まれて」(在阪記者)

 そんな矢野監督に対して、こんな意見も聞かれた。
「実直というか、考えていることをそのまま喋ってくれるような印象を受けました。阪神に限らず、プロ野球監督には新聞の見出しやフレーズになるような言葉を用意して喋るタイプが多いんですが。失礼だが、コメントに面白みがないんです」(ベテラン記者)

 矢野監督の就任以降、インパクトの強いタイガース情報がないのはそのせいかもしれない。だが、近年の阪神指揮官とかなり異なるタイプのようだ。
「読書家ですね。自己啓発や起業家の著書、心理学の本などを読みあさっています」(球界関係者)

 矢野監督の「読書」は、引退してから始まったという。将来の指導者としての勉強もあったそうだが、二軍監督に就任した昨季の読書量は相当なものだったそうだ。

 その読書による独学が、18年ウエスタンリーグ新記録の「年間163盗塁」につながった。阪神は16年秋季キャンプから、400m障害などで活躍した陸上の秋本真吾氏を臨時コーチに招いている。球団の狙いは正しいランニングフォームの習得で、「怪我防止につなげれば」という期待を秘めていた。しかし、当時のコーチスタッフは「専門外」と端から決めつけ、秋本氏のランニングトレーニングをただ遠巻きに見ているだけだった。しかし、矢野監督だけは違った。自身が学生時代に教わった野球の走塁フォームを秋本氏に伝え、「どんなふうに変えていかなければならないのか」と尋ねたという。

「野球は野球、陸上は陸上と線引きをするのではなく、日本の陸上選手が国際大会で成果を挙げている要因を探ろうと、秋本氏を質問攻めにしていました」(前出・同)

 矢野監督は当時から柔軟な発想を持っていたようだ。163個の盗塁は単に「積極的に走れ」と命令するだけでは達成できない。盗塁を仕掛けることによって生まれる相手チームへのプレッシャー、盗塁を仕掛けるために必要な前準備を訴え、選手にも考えさせた。

 矢野監督のこうした言動を聞くと、明らかに近年の指揮官とは異なる。ドラフト1位で俊足外野手の近本を指名したのも、二軍監督時代と変わらず、機動力野球を継続させていくためだろう。また、 「盗塁に必要な前準備を考えさせてきた」と聞くと、機動力野球の延長上に、課題だった「ポスト鳥谷」や「先発投手の育成」があるのかもしれない。新・遊撃手=堅守、無駄な失点を相手に与えず、機動力で点を積み上げていけば、若手投手も安心して投げられるだろう。

 関西メディアによる重圧に押しつぶされなければ、矢野阪神は優勝戦線に浮上できると思うのだが…。

(スポーツライター・飯山満)

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