写真はただいま妖怪博物館にて展示中の「謎のミイラ」の実物である。
全長は約15センチほどの手のひらサイズ。山口敏太郎事務所へ届いた際には黒い重箱に収められており、箱には「半石化木乃伊」との記載があった。
また、付属品としてミイラ専用と思わしきガラスケース(約20センチ)と台座、ミニサイズの座布団が同封されていた。
まるでコレクターズフィギュアのような豪華オプションであるが、恐らくはこれは妖怪博物館へやってくる前から貴重な展示品として扱われていたということだろう。
さて、このミイラの正体であるが、一般公開から2か月が経過した今も一向に正体がわからず博物館の従業員を悩ませている。
触ってみたところ、非常に固く「半石化木乃伊」の名に恥じないカチカチのボディを持っているが、ミイラ独特の死臭は全く感じられず元が生物だったかどうかはわからない。
ミイラには眼球のくぼみやあばら骨などは見受けられるが、人間にしては体に比べ大きい頭蓋骨を持ち、指や足が細長いのが特徴的である。
河童や座敷わらしといった人間タイプの妖怪とも形状が異なるため、妖怪博物館では「分類不明」「宇宙人らしき生物のミイラ」として紹介するのが精一杯なのである。
さて「生物が石となる」「死ぬと石になる」という現象はギリシア神話の「メデューサ」やファンタジー作品、SF作品にはお馴染みの設定だが、近年「触れると石になる湖」が実在したことが広く世界で報道された。タンザニアの北部ナトロン湖のほとりには石と化した鳥やコウモリなどが多数発見されているのだ。
これはナトロン湖のアルカリ度が異様に高く、動物が湖へ飛び込むやいなや肉が石化をはじめ、そのまま死に至らしめるためとされている。
もしかすると今回のミイラも宇宙からやってきた宇宙人が地球の環境に耐えられず徐々に石化し死んでしまったものかもしれない。
なお、余談ではあるがこのミイラ専用の台座には「ラーミ」と書かれた紙も貼りつけてあった。これは戦前の日本でよく見られた「右横書き」でこのミイラが古くから日本にあった証拠の一つと考えられるが、「ライミ」や「伊乃木」ならともかく「ラーミ」とはなんともおまぬけな印象を与える。
現在、妖怪博物館ではこの悲劇のミイラは愛着を込めて「ラーミくん」と呼ばれている。
是非、あなたも「ラーミくん」の「第二の人生」を見守ってみてはいかがだろうか。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)