■予選1次ラウンド
侍ジャパン敗退の可能性=0%
侍ジャパンは東京で行われる1次ラウンドB組でキューバ、オーストラリア、中国と対戦する。メディアや評論家の中には今回の侍ジャパンが、昨年11月の強化試合でメキシコに7対3で敗れたことや大谷翔平が参加しないことで、1次予選敗退もありうると予想する報道もあるが、筆者はその可能性はゼロと見ている。なぜなら1次予選で対戦するキューバ、豪州は侍ジャパンよりレベルダウンしているからだ。
野球大国のイメージが強いキューバだが、前回大会の主力だったトマス、アブレイユ、グリエル兄、R・イグレシアス、エレディア、アルエバルエナらが次々に亡命。その穴を盛りが過ぎたベテランと経験不足の若手で埋めたが、準優勝した第1回大会('06年)に比べると戦力は半減していると言えるだろう。
豪州は'04年のアテネ五輪準決勝で日本代表を破った実績があるが、野球人気の陰りで野球を志向する若者が激減。一時は10人近くいたメジャーリーガーもほとんどいなくなってしまった。10年前は相撲で言えば前頭レベルだったが、現在は幕下レベルに落ちている。中国は三段目レベルなので侍ジャパンが1次ラウンドで敗退する可能性はない。
■予選2次ラウンド
侍ジャパン敗退の可能性=5%程度
侍ジャパンは予選1次ラウンドを勝ち上がると3月11日から東京で始まる予選2次ラウンドで、予選B組2位のチーム(おそらくキューバ)、および予選A組(オランダ、韓国、台湾、イスラエル)を勝ち上がった2チームと対戦する。
A組から勝ち上がってくる可能性が高いのはオランダ、韓国、台湾の順だ。
この中で手強い相手になりそうなのはオランダだ。同国代表は昨年11月に来日して侍ジャパンと2試合強化試合で対戦し、9対8、12対10で惜敗したが、この時はバリバリの大リーガーが1人も入っていなかった。
しかし、今回は打線の中軸にレッドソックスの3番打者ボーガーツ、オリオールズで昨年25HRのスコープ、ヤンキースで昨年20HRのグレゴリアス、守備力メジャー№1の遊撃手A・シモンズらを揃えて臨む上、投手陣の柱としてソフトバンクのバンデンハークが加わる。日本戦ではバンデンハークが先発すると思われるので、そう簡単に勝たせてはもらえないだろう。昨年11月の強化試合のように大味な野球をやってしまうと、コテンパンにやられる可能性もある。
それでも侍ジャパンが2次予選で敗退する可能性は低い。キューバには9割以上の確率で勝てる上、韓国と台湾には8割以上の確率で勝てると思われるからだ。
韓国代表チームは、第1回、第2回大会で侍ジャパンと死闘を演じた時の名将、金寅植(キム・インシク)が監督に復帰したが、エース格の金廣鉉(キム・グアンヒョン)がトミージョン手術、兵役を終えて期待されていた李庸燦(イ・ヨンチャン)もヒジの不調で欠場。さらに主砲の姜正浩(カン・ジョンホ=パイレーツ)が飲酒運転で逮捕され、メンバーから外れた。大リーグのレギュラー選手である金賢洙(キム・ヒョンス=オリオールズ)と秋信守(チュ・シンス=レンジャーズ)も出場を見送ったため、中軸はトウの立った李大浩(イ・デホ)と金泰均(キム・テギュン)が担う。
台湾は日本の野球を知り尽くした元西武のエース郭泰源監督が指揮を執るが、国内のプロリーグとアマチュア球界の対立から、プロ4球団のうち最も選手層の厚いラミーゴ・モンキーズが選手の派遣を見送った。陳偉殷(チェン・ウェイン=マーリンズ)ら大リーグ組も参加しないので、陽代鋼(巨人)、呉念庭(ウー・ネンティン=西武)、郭俊麟(カク・シュンリン=西武)ら日本組と国内組のベテランが頼りだ。前回大会では元ヤンキースのエース王建民が先発で奮投して侍ジャパンを破る寸前まで行ったが、今大会は彼も出場しない。
このように2次ラウンドで対戦が予想されるチームも、オランダ以外は、前回よりレベルダウンしている。そのため、日本代表が2次ラウンドで敗退する可能性は低い。1敗することはあっても、2勝1敗で4カ国が戦う決勝ラウンドに勝ち上がるだろう。
問題はそれからだ。前回大会で優勝したドミニカは今回さらにグレードアップした陣容で臨む。メキシコとプエルトリコも士気が高くメンバーも粒揃いだ。米国とベネズエラは、今回もメンバーは強力でも士気は低い印象を受けるが、地力は1・2を争うレベルである。侍ジャパンはどこと当たっても苦戦を余儀なくされる可能性が高い。
スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。