「お互いに自分に厳しい野球観を持っており、プロフェッショナル同士、衝突してしまう部分もあったのでしょう。黒田は力のあるうちに帰還しなければ、意味がないと思っています。ヤ軍での年俸は1600万ドル(約16億円強)ですが、お金の問題ではありません」(前出・特派記者)
ヤンキースはワールドシリーズ終了前に黒田と残留交渉を始めようと思っている。その前に広島は手を打っておきたい。CS直前に『野村退任』を発表したのは、黒田へのメッセージでもあったのだ。
また、これも本誌で既にお伝えしているが、野村監督は昨年オフに辞任を申し出たものの、松田元オーナーがそれを許さなかった。野村監督は16年ぶりのAクラス入りと初のCS進出を果たした功労者でもある。「夜、眠れない」とこぼすなど、体調面が優れないことは同オーナーの耳にも届いていた。とはいえ、野村監督は地元財界が応援する“カネの成る木”でもあり「3位での退任は芳しくない」と判断された。
「昨季、今季ともに観客動員数が増えています。特に昨季は初のCS進出で『来年こそは!』の期待が広島県全体にあり、そのタイミングで辞めさせたら水を差してしまいます。無理やり続投させた感もありますが、辞任を申し出た理由は去年も今年も体調不良なので、これ以上は無理をさせられない、と」(ベテラン記者)
今季の観客動員数は190万4781人で前年比21.7%増。『カープ女子』なるムーブメントも起き、23年ぶりのリーグ優勝にも現実味が増していた。
「無理やり続投させたので、野村采配の批判は球団内ではタブーでした。でも、巨人3連戦を機に空気が変わりました」(前出・関係者)
9月2日、野村監督は首位巨人と1ゲーム差で3連戦に臨んだが、最悪の全敗。Vムードが一気に消滅した。野村体制を応援してきた地元財界からもため息が聞こえるようになり、勝てば2位確定だった10月1日の阪神戦も落としてしまった。「せめて2位」の願いをつぶしたダメージは、かなり大きかったそうだ。
「2位になれば、CS第一ステージの主催権が得られ、1試合1億円ほどの収益も見込めました。マツダスタジアムの隣接地に建設中の室内練習場は約16億円。そういう先行投資を行っている時期でのCS主催権の喪失は痛かった」(同)
『黒田帰還』はそんな沈み掛けたムードを一変させる起爆剤ともなるだろう。
「野村監督の後は緒方孝市コーチが継ぎ、将来的には“黒田監督”の流れもできるはず」(広島担当記者)
メジャー挑戦で揺れるマエケンとヒロキがそろえば…。来季こそカープファンの悲願はかなう!