A:歩くことは運動(身体活動)の一つです。運動をしない人、歩かない人は、運動をする人、よく歩く人よりも寿命が短いということを裏付ける報告はこれまでたくさんあります。
たとえば、乳がんの再発予防や糖尿病の死亡率を下げるのは、週5回の激しい運動が有効とされています。糖尿病については、最近も厚生労働省研究班(代表、曽根博仁・新潟大教授)が「速歩きで死亡が半減する」との報告をしました。
●速歩きが重要
研究班は、50〜70歳の糖尿病の患者約1700人に、仕事や日常生活以外に日頃、どんな運動をどれぐらいしているかをアンケートで尋ねるとともに、8年間、経過観察をしました。
運動の種類や時間から1週間当たりの運動量を推計し、3グループに分けて比較。その結果、運動量が多いグループは、ほとんど運動をしないグループに比べ、死亡リスクが0.47倍で半分以下でした。
最も運動量が多いグループは、時速6kmの速歩きに相当する運動を毎日30分以上行っていた人たちで、運動時間の平均は1時間10分程度だったとのこと。歩きと寿命の関係においては速歩きが重要です。
例として、フランスのグループが、65〜85歳の普通の生活をしている健康な男女3208人を対象に、歩く速さと生存率の関係を調べた報告があります。
これらの人たちの最大歩行速度を測定し、平均で5.1年間追跡したところ、そのうち209人が死亡。死因の内訳は、99人ががん、59人が心血管障害、51人がその他でした。
歩行速度と死亡率の関係を調べてみると、歩くのが速かった人のほうが遅かった人よりも統計的に死亡率が低いという結果が得られました。
また最近では、運動を定期的に行っても、椅子に座っている時間が長い人では運動の効果が帳消しになると指摘されます。そのため、仕事時も含め日常生活において、とにかく小まめに体(足)を使うように勧められています。
運動に話を戻すと、6kmを1時間10分程度で歩くことが必要ですが、5kmを30分程度ジョギングするのでも構いません。泳ぐなら、750mを20分ぐらいで泳げばよいでしょう。
このように運動の強度によって時間は違いますが、歩くことから始めるのがベターでしょう。
牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を牧病院(大阪市)で実践。小山病院(大阪市)院長。