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怪奇『きさらぎ駅』謎の地はどこにある?

 インターネットが日本に普及しておよそ20年。噂話などはそれまでの口コミから取って代わったネットによって爆発的に拡散されるようになり、都市伝説はその在り方を変えた。そうして数々の“ネット都市伝説”が生まれたが、中でも有名なのが、『2ちゃんねる』を発祥とする『きさらぎ駅』だ。

 この話は04年1月8日、同サイト内にある『身のまわりで変なことが起こったら実況するスレ26』の書き込みに端を発する。同日深夜、“はすみ(葉純)”というハンドルネームを名乗る人物からの、
「気のせいかも知れませんがよろしいですか?」
との投稿から始まり、
「先程から某私鉄に乗車しているのですが、様子がおかしいのです」
「いつも通勤に使っている電車なのですが、先程から20分くらい駅に停まりません。いつもは5分か長くても7〜8分で停車するのですが」
 と書き込みが続く。

 その後、電車は投稿者が乗車してから約40分経ってようやく駅に停車。その駅で降りてしまったそうだが、そこは無人駅でホームにいるのは投稿者だけ。この駅の名前が「きさらぎ駅」だったという。

 駅周辺に着いても、何もなく、草木が生い茂るだけで人の気配はおろか民家すらない。しかも、そもそも駅名に聞き覚えはなく、そこがどこなのかも投稿者には見当がつかないというのだ。

 ただし、携帯電話は使えるらしく、家に電話して迎えを頼んだものの、両親はきさらぎ駅の所在地が分からず、困惑するだけだった。

 ここで、投稿者はきさらぎ駅を離れ、電車の進行方向沿いに歩き始める。やがて伊佐貫という名前のトンネルを抜けた後、誰かと出会ったらしく、
「親切な方で近くの駅まで車で送ってくれる事になりました」
 と事態は急転。ところが、送ってくれるはずが、「先程よりどんどん山の方に向かってます〜(中略)〜全然話してくれなくなってしまいました」
 とマズい状況に。結局、携帯電話の電池が残りわずかになり、
「もうバッテリーがピンチです。様子が変なので隙を見て逃げようと思っています。先程から訳のわからない独り言を呟きはじめました。いざという時の為に、一応これで最後の書き込みにします」
 これを最後に彼女からの投稿は二度となかった。ちなみに投稿時間は翌1月9日の午前3時44分を指していた。

●困難を極める所在地特定スレッド内で“はすみ”なる投稿者は、他の住人たちからの質問にも答えている。これとて創作の可能性は否定できないのだが、書き込み自体は投稿者の身に起きた出来事としてリアルタイムに投稿されている。だが、最も不可解な点は、彼女が降りたきさらぎ駅が、日本中のどの路線にも実在しないことだ。

 実は、比較的早い段階で、
「路線は静岡県の私鉄です」
「新浜松からの乗車です」との投稿が行われている。また、
「乗った電車は11時40分だったと思います」
 とも書き込んでおり、以上のことから新浜松駅を始発とする静岡県の私鉄『遠州鉄道』の午後11時40分発の列車に乗ったとの推測が浮かび上がる。

 それに、スレッドによれば、乗車した新浜松駅から下車したきさらぎ駅までの所要時間は約40分。しかしながら遠州鉄道は始発の新浜松駅から終点の西鹿島駅までの所要時間は33分。どの列車も各駅停車で、1〜3分で次の駅に停車することから、ここで彼女の書き込みに大きな矛盾が生じてくる。

 また、投稿者は、最後から3番目の書き込みで送ってくれると言った“親切な方”に場所を尋ねたところ、「比奈」という地名を挙げたと語っているが、彼女は「絶対にありえない事だと思うのですが」と否定。なぜなら静岡県内に「比奈駅」自体は実在するが、その場所は遠州鉄道からは100キロ以上離れた富士市内を走る別の私鉄『岳南電車』の駅だからだ。また、遠州鉄道、岳南電車の沿線には駅名どころか「如月、卯月(※読みはいずれも「きらさぎ」)」という地名すらない。愛知県西尾市、岐阜県岐阜市や同県笠松町には如月という地名があったが、いずれも書き込みにあったイメージにはそぐわない場所だった。

 このように、数々の投稿を突き詰めて検証すると、きさらぎ駅の実在は否定せざるを得なくなるのだ。

 これら噂を受けて、実際、鉄道会社にも問い合わせがあるという。鉄道ファンを名乗る男性から、きさらぎ駅の実在について尋ねられたことがあると明かすと、筆者の問いに答えてくれたJRの現役駅員もいたほどだ。

●そして投稿者のその後とは…?

 そして、書き込みから7年経った11年、きさらぎ駅のまとめサイトに同じハンドルネームの「はすみ」を名乗る人物から「信じてくれないと思いますが。7年経った、今、普通の世界に戻れました」との書き込みがあった。

 04年の最後の書き込みの後の出来事も説明しており、山奥の暗い森の中で車が停まった後、別の男性が近づいてきた瞬間、車が光って運転していた親切な人は消えてしまう。そして、「今の運転手(親切な人)は消した。今のうちに逃げるんだ!」と叫び、彼女が泣きながら走って気が付くと見覚えのある最寄り駅で、7年も過ぎていたという内容だ。

 冷静に考えれば、7年も行方不明になっていれば公開捜査となっていてもいいはずだが、新聞やテレビで見た記憶はない。そのため、よくできた都市伝説と見る向きもあるが、完全な作り話であることを証明するには至っていない。

 別の世界に連れて来られてしまったことに対して、ネットを通じて書き込みという形で実況̶ーー。
「きさらぎ駅」とは、まさに新時代らしいネット都市伝説だといえるだろう。

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