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本好きオヤジの幸せ本棚(38)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『俺たちに偏差値はない。ガチバカ高校リターンズ』(福澤徹三/徳間書店 1680円)

 誰にでも青春時代はある。おっさんであろうが、おばさんであろうが、皆、若かりし頃を経て今に至っているのだ。
 本書はSF仕立ての青春グラフィティー小説である。主人公の〈ぼく〉=百鬼悠太は平成の現代を生身で生きている少年だ。もうじき高校に入学する予定である。性格は名前に似合わず草食系。目下、春休み中だが、母と一緒に東京から九州へ小旅行することになった。故人である父の母親、すなわち祖母が大病で入院しているので見舞いをしなければ、と母が言うので渋々従うことにしたのだ。ところが、退屈しのぎに散策をしていたところアクシデントで古い井戸に転落。気付いてみると1979年=昭和54年にタイムスリップしていた。
 祖母は平成時代より当然若く、なぜか〈ぼく〉を剛志郎と呼ぶ。それは父の名前である。この時代での〈ぼく〉は祖母の息子になっているのだ。そして通うことに決まっている高校は偏差値最低ランク、不良どもの巣窟であった…。
 昭和50年代の少年たちはリーゼントに剃り込み。自分を大人っぽく見せるためワイルドに暴れまくっていた。草食系の〈ぼく〉は戸惑うものの、いつしか彼らと友情を育んでいく。そう、本作は便利過ぎる今に慣れて軟弱なままだった少年がたくましくなっていく成長物語なのだ。
 男には、やはり“強さ”は必要だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『山田洋次名作映画DVDマガジン』(講談社・創刊号特別定価790円【通常価格1590円】)

 映画監督50周年を迎え、今なお日本映画界の第一線で活躍する山田洋次監督の代表作をDVDに完全収録。
 創刊号は高倉健主演の名作『幸福の黄色いハンカチ』で、隔週刊毎号1作品を全25巻で刊行の予定だ。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 新年早々、残念なニュースが飛び込んできた。『漫画サンデー』(実業之日本社/350円)が2月19日発売・通巻2795号をもって休刊になるという。昨年6月に週刊から隔週刊に変更し雲行きの怪しさは漂っていた。創刊は1959年。実に約半世紀にわたる歴史に、幕を閉じることになる。
 『静かなるドン』(新田たつお)のヒットで知られる他、オールド世代にはテレビアニメの原作にもなった『ギャートルズ』(園山俊二)が懐かしい。NHKでドラマ化された『まんだら屋の良太』(畑中純)は、九州の温泉地に住むイガグリ頭の高校生の“性”の純粋さを描いた作品だった。拳銃を持たない刑事が主人公の『まる腰刑事』(原作・北芝健/作画・渡辺みちお)なども、個性的な設定・キャラクター。他に類を見ないオトナ向け漫画誌だった。
 昭和から続いていた個性的な雑誌が、また一つ消えていく…。本好きオヤジにとっては実に寂しい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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