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本好きのリビドー

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提供:週刊実話

 悦楽の1冊『石平の裏読み三国志―英雄たちに学ぶ乱世のリーダーシップ』石平 PHP研究所 1600円(本体価格)

★三国志をリーダーシップに着目して読み解く

『水滸伝』と並んで『三国志』は、もはやその漢字三文字自体が日本語の慣用表現あるいは記号として、日常の使用頻度と認知度の点で殿堂入りの基本語彙なのは間違いない。

“政界”“プロ野球”“AV”“アパレル”“家系ラーメン”と一見どれだけ脈絡なく単語を並べたとて、そのあとに「三国志」を加えるだけで瞬時に風雲急を告げ「英雄豪傑が次々と現れては消える波乱万丈の雄大な物語が面白エピソードをてんこ盛りに添えて展開されますよ」と約束するかのごとき、まさにマジック・ワード。某推理作家の連発する列車の名前+「殺人事件」などとは雲泥の差の訴求力だ(吉川英治の『江戸三国志』には若干の違和感を覚えたが)。

 本書は武漢ウイルス収束後の世界情勢を地球規模の大乱世の始まりと睨む著者による、『三国志』の登場人物の実像分析を通じた指導者論。冷戦下の昔、山岡荘八の『徳川家康』を指して、家康の生まれた三河の松平家が日本なら、東の大国・駿遠二州を支配する今川家がソ連で、西の強国・尾張の織田家はアメリカになぞらえられたものだが、著者は正史『三国志』といわば小説の『三国演義』とを縦横無尽に行きつ戻りつしつつ魏をアメリカに、呉を中国に、そして日本を蜀に見立てているのが興味深い。

 性悪説に立ち、覇道を貫く魏の曹操を、トランプ大統領と比較して論じるのはさもありなん(ちなみに曹操にあってトランプにないのは詩の才能だろう。『短歌行』は素晴らしき英傑の絶唱。やはり三国志好きの立川談志師匠も“男なら曹操を選べ”と書かれてたっけ)。しかし、では習近平国家主席が呉の孫権かといえば、そうは問屋が卸さぬところが芸が細かい。秀吉や田中角栄の逸話も交えて一気に読める面白さ。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

「アマビエチャレンジ」という言葉をご存じだろうか? 「アマビエ」といっても甲殻類の「甘海老」ではなく、架空の妖怪のこと。江戸時代の弘化3年(1846年)かわら版に登場した正体不明の生物で、疫病が流行ると出現し、その姿を描いて人々に見せると流行病の終息につながるといわれたらしい。

 そのアマビエを絵で描いたり、または毛糸などを使ってぬいぐるみを創ることなどを「アマビエチャレンジ」という。そうすると、コロナウイルス封じに御利益があるという。

 そこで漫画家、イラストレーター、陶芸家らがさまざまに描き、創った作品を、1冊にまとめて紹介したのが、本書『みんなのアマビエ』(扶桑社/1000円+税)である。

 アマビエをネット検索すると、顔は人間に似ているが口だけは鳥のクチバシのように尖り、身体はウロコを帯び、足元まで伸びた長い髪を持つ「半人半魚」の姿。海中から現れる時は全身が光っていたとか…。

 河童やツチノコなど、都市伝説に現れるUMA(未確認生物)の一種といっていいだろうが、グロテスクではなく、どこか愛らしい。

 本書には西原理恵子(漫画家)、田島享央己(彫刻家)らが制作した、さらにユニークなアマビエがてんこ盛り。ギャグタッチに脚色された佇まい、現代風にマスクをした格好など、クスッと笑えて、癒やされる。

 ストレスで疲れきったコロナ禍で必要なのは、こうしたユーモアを受け入れられる気持ちの余裕ではないだろうか。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 橋本愛喜
トラックドライバーにも言わせて 新潮新書 760円(本体価格)

★再配達を出さないだけで_大きな負担軽減に

――そもそも大型トラックドライバーになったきっかけはなんですか?
橋本 大学卒業後、実はニューヨークへ音楽留学する予定だったんですが、大学卒業の1カ月前に小さな工場を経営していた父が突然倒れ、その日から現場を継ぐことになったんです。工場の業務内容は「プラスチック金型の研磨」。これがいわゆる職人業で、社会経験がほとんどない社長令嬢がヤンチャで堅物な男性35人に覚悟を見せるには、現場作業だけでなく、トラックに乗って自ら過酷な環境に飛び込んだほうが伝わると思ったんです。

――トラックドライバーにしか分からない、さまざまな“業界の事情”があるといいますね。
橋本 例えば、路駐してハンドルに足を上げて休んでいる姿。事情を知らない人からは「こんなところでサボるなよ」と思われがちなんですが、彼らはサボっているわけではなく、ああして「時間調整」をしているんです。車体の大きなトラックはいかんせん居場所がない。大型車が停められるコインパーキングもなければ、長時間駐車を許してくれるコンビニもないんです。こう言うと「時間調整しないで荷主にさっさと届ければいいだろ」と言われることもあるんですが、トラックは延着はもちろん、実は早着も許されていないんです。結果的に路駐し、足がしびれるのを目覚まし代わりに仮眠待機するしかなくなるというわけなんです。

――現在、物流業界が抱えている問題とは?
橋本 宅配を担う配達員には、「再配達」という大きな負担があります。中には「化粧してなかったから」「知らない人と対面したくなかったから」と時間帯指定をしたにも関わらず、居留守を使う人もいます。それは消費者側に「サービス=無料」という潜在意識があるからなんです。サービスが無料なのは決して悪いことじゃありません。でも、誰かの犠牲が伴うサービスなんて、もはやサービスでも何でもないんです。
 トラックに乗る前は、私自身も「邪魔だ」「約束通りに配達しろ」という思いがありました。それが事情を知らない一般の方の素直な気持ちだと思います。
 ただ、彼らが抱えるこうした諸問題を解決するのは、業界内だけではもはや不可能なんです。昨今、新型コロナウイルスで世間が外出を控える中、トラックドライバーは社会インフラを保つために今日もひたすら走り続けています。買いだめ、買い占めせず、再配達を出さないという消費者のわずかな努力だけでも、彼らの足取りはぐっと軽くなるはずです。
(聞き手/程原ケン)

橋本愛喜(はしもと・あいき)
大阪府生まれ。元工場経営者、日本語教師。現フリーライター。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異等、幅広いテーマを執筆。

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