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〈企業・経済深層レポート〉 伊藤忠、サントリー、ロート製薬… “Vチューバー”市場

 大手総合商社の「伊藤忠商事」が、国内屈指のバーチャル・ユーチューバー(以下、Vチューバー)のマネジメント会社「いちから」と資本業務提携をして、Vチューバー市場に本格参入することが明らかになった。

 動画配信サイト「ユーチューブ」へ動画投稿する人を「ユーチューバー」というが、Vチューバーとはどういった存在なのか。

「ユーチューバーとして活動するのは、雨上がり決死隊の宮迫博之や元SMAPの草彅剛など、生身の人です。一方、Vチューバーは動作や声を担当するのは生身の人ですが、表に出てくるのは2Dや3Dのキャラクターで架空の人物です。いわば、アニメのキャラクターがユーチューバーのように活動するのがVチューバーなのです」(IT業界関係者)

 国内では現在、約1万人のVチューバーが存在するといわれていて、市場も急速に伸びている。

「ユーチューバーの国内市場は2020年475億円(サイバーエージェント系列企業調査)と言われている中、専門家はVチューバーの市場規模を2年後には500億円を超えると見ています」(同)

 そんな中での今回の資本業務提携。伊藤忠商事には、どういった狙いがあるのか。

 伊藤忠商事は、丹羽宇一郎元社長が民間出身者として初めて駐中国大使を務める(’10〜’12年)など、中国に様々なネットワークを持ち、中華圏に強い企業として有名だ。今年5月8日の決算会見では、鈴木善久社長が「’20年は中国経済の回復が世界のけん引役になる可能性を秘めている」と述べた。その言葉を裏打ちするように昨年、資本提携先の中国国有企業のCITICグループや中国首都・北京市にある清華大学系の投資法人と組み、2000億円規模の投資ファンドを設立。日本のスタートアップ企業を投資対象として、中国市場への進出を促す動きにも出ていた。

 こうした経緯を踏まえると、伊藤忠商事のVチューバー事業への資本業務提携は合点がいくという。

「日本アニメの存在は、世界で存在感を増し続けています。世界に誇る日本のアニメコンテンツをバーチャルキャラクターに盛り込んだVチューバーは、すでに中国やアジアを中心に注目されていますからね」(アニメ業界関係者)
 今回、伊藤忠商事とVチューバーで提携する「いちから」とは、どんな企業か。

「’17年に事業開始した若い企業ですが、所属しているVチューバーの累計チャンネル登録者数はすでに1000万人を超え、配信動画の累計再生回数は10億回を超える日本最大級のVチューバー企業です。国内だけでなく、中国を筆頭に東南アジアにも積極的に事業展開を行っている。それだけに伊藤忠商事だけでなく、ソニー・ミュージックエンタテインメントといった企業も同社に関わるほどです」(前出・IT業界関係者)

 国内では、大手企業のPRや情報発信をVチューバーが行う例も増えている。例えば、大手飲料メーカーのサントリーホールディングスでは、2018年8月にサントリー公式Vチューバー「燦鳥ノム」がデビュー。雑談、ゲーム実況、歌などのエンタメ系の配信の他に、自社製品のレビューも行っている。ロート製薬も2018年6月に公式Vチューバー「根羽清ココロ」をデビューさせている。

「’18年に茨城県が全国初のVチューバー『茨ひより』を起用したのを皮切りに、情報発信にVチューバーを活用する地方自治体も増えている。行政施策から観光情報まで幅広く情報を発信しています」(経営コンサルタント)

 大手企業や地方自治体から公式Vチューバーがデビューするのには、大きな要素があると明かすのは大手広告代理店関係者だ。

「最近はテレビCMにVチューバーが採用されることも多くなりました。最も有名なVチューバーの『キズナアイ』は、若い人からはトップアイドル並みの人気を誇るほど。ファンである若者から興味を持ってもらってます。テレビCMはまだ著名なタレントが主流ですが、怖いのはスキャンダル。その点、Vチューバーはスキャンダルとは無縁というメリットもあります」

 さらにこう続ける。

「高齢者にはVチューバーの浸透度は低いが、芸能人やアイドルをも超えるポテンシャルを持っている。その空気を感じ取っているからこそ大手企業や地方自治体が積極的に活用しているのです」(同)

 また、猛威を振るっている新型コロナもVチューバーにとっては追い風になっているようだ。

「自宅ですごす時間が増え、Vチューバーを視聴する人も増えている。感染拡大防止の啓発に活用する地方自治体も出ています」(同)

 Vチューバー業界の快進撃は止まらない。

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