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〈企業・経済深層レポート〉 ドコモ、au、ソフトバングが戦々恐々 「楽天」本格参入で荒れる携帯電話業界

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提供:週刊実話

 日本の携帯電話業界は長年、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクという携帯キャリア3社の寡占状態が続いていた。そんな中、大手IT企業「楽天」のグループ会社「楽天モバイル」が、4月8日から「第4の携帯電話」として、業界に本格参入。国内の携帯電話業界は早くも大揺れだ。

 まず、「楽天モバイル」のメリットとデメリットを携帯電話業界関係者が解説する。

「メリットは、他社だと月額7000円前後かかる利用料金が月額2980円と格安な点です。しかも大手が、いくつもの複雑な料金プランがあるのに対し、楽天モバイルは1つのみで大変分かりやすいと評判です」

 データ通信や通話は、楽天モバイル回線網が張り巡らされている3大都市(東京・大阪・名古屋)では、無制限で使い放題だ。

「驚きなのは、サービス開始の4月8日から申し込み順に300万人までは、月額2980円の利用料金が1年間無料という大盤振る舞い特典が付いたこと。しかも、他社から乗り換えた際の解約料金もゼロ円、契約期間の縛りもありません」(同)

 一方、デメリットもある。

「楽天モバイル最大の課題は基地局不足。『月額2980円で通話やデータ通信が無制限』というのは、前述の3大都市のみで、他の地域は対象外です。都内でもまだまだ整備が進んでおらず、地下鉄やビルの谷間などでは通信が途絶えがちになるのというデメリットがあります」(同)

 楽天モバイルの基地局不足をカバーするのが、KDDIから借りているau回線だ。

「データ通信が2ギガを超えると、au回線の場合は速度制限がかかる。今はミドルユーザーで月平均5〜8ギガ前後が必要といわれているだけに、2ギガで実質使用不能となる楽天モバイルは、地方のミドルユーザーにとっては魅力ゼロでした」(同)

 そこで三木谷会長は4月8日、au回線使用地域のデータ通信上限を2ギガから5ギガへアップ(4月22日以降)することを発表した。

 とはいえ、携帯電話業界に詳しい経営コンサルタントは、「それでも二の足を踏む人もいます」と指摘する。

 その理由は楽天モバイルの対応機種だという。

「国内のスマホ利用者の約4割が『iPhone』利用者(MMD研究所の’19年調査)です。しかし、楽天モバイルはiPhone未対応。グーグルの携帯端末『Android』がメインとなるため、iPhoneユーザーにとって大きなネックとなっている」

 さらに近年問題になっている異常気象や災害も、楽天モバイルにとって逆風だ。

「昨年、千葉県、東北地方を台風が連続直撃して大被害が出た。災害時に携帯電話は、もはや命に関わる重要なアイテムです。しかし、楽天モバイルは『災害時につながりにくいのでは?』と消費者の間で思われていて、それで利用をためらっている人もいます」(同)

 とはいえ、楽天も手をこまねいているのではない。

「’19年度の基地局整備を中心とした投資は1635億円。前期の23倍で、大都市中心に4400局も整備した。これは国に提出した計画を3割上回るスピードです。今後、’28年度までの8年間で、さらに5000億円強の投資で基地局を地方に増やし、災害にも強くして利用者増加を図りたいという」(楽天関係者)

 楽天モバイルは1年間の料金無料や超安値の利用料金設定、それに基地局の設備投資などで膨大なコストがかかっている。

「楽天は’23年度の黒字化を目指すと言うが、’19年度は600億円の赤字で今後も経営は綱渡りが続くでしょうね」(同)

 しかも、先行する大手キャリア3社は、基地局が約20万局前後ある上に、通信速度が4Gの約1000倍ある5G基地局の整備を進め、楽天モバイルの追撃を許さない構えだ。

「楽天はネット通販から金融までの楽天商圏全体でプラスになれば勝ちと見る。携帯はそのツールの一部でしかありません。しかも、MMD研究所の最新調査では、楽天モバイルへ新に6割近い人が関心を寄せている結果も出ています」(前出・経営コンサルタント)

 大手三社は楽天携帯参入に静観を決め込むが、内心は戦々恐々だ。

「携帯電話事業への新規参入は膨大な設備投資が必要で、大手3社の寡占状態が続き、利用料が高いと言われながらも大きく下がることはありませんでした。それだけに楽天モバイルが価格破壊を起こすのではと、業界内では噂されていますし、消費者も期待しています」(前出・携帯電話業界関係者)

 楽天はユーザーの期待に応えられるのか。今後の動向が注目される。

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