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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★無期限消費税凍結を

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提供:週刊実話

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済失速に関して、安倍総理は、3月17日の自民党両院議員総会で「厳しい状況の経済をV字回復させるため、思い切った強大な経済政策を大胆に練り上げていこうではないか」と声を上げた。

 しかし、米国が最大一人1200ドル(約13万円)の現金給付を含む総額2兆ドル(220兆円)という大きな財政出動を構えるのと対照的に、日本ではせいぜい一人2万円程度の給付にとどまる可能性が高い。しかも、それを期限付きの商品券にするだとか、高所得者は対象から外すべきだとか、時間のかかる話ばかりしている。経済対策の総額も、アメリカの10分の1程度になるだろう。

 私は、現金給付や中小企業向けの無担保融資などは、コロナショックに対する緊急対応措置としては、重要だと思う。自粛で収入が激減して、ローンの支払いにも窮している人が多いため、シンプルなやり方ですぐやる必要があるからだ。

 ただ、現金給付や緊急融資は止血剤のようなもので、景気対策としては、消費税減税が最も望ましい。現金給付で当座をしのいでも、需要を回復させなければ、景気は戻らないのだ。

 忘れてならないのは、今回の景気後退が昨年10月の消費税増税で始まったという事実だろう。昨年10〜12月期のGDPは年率で7.1%も減少したが、コロナウイルスの影響は入っていない。消費増税が消費を失速させたのだから、消費税率を下げれば消費は戻る。当たり前のことだ。

 ところが、自民党の若手議員までが消費税凍結を訴えているというのに、政府や御用学者は、消費税減税に否定的だ。消費税は社会保障財源であり、税率変更は手間も時間もかかるというのが彼らの主張である。

 しかし、消費税減税の財源は、すべて赤字国債で賄えばよい。その国債をすべて日銀が買い取れば、資金供給が増え、金融緩和にもつながる。また、消費税率がゼロであれば、システム変更は最小限で済む。単に税抜き価格で売るようにすればよいからだ。

 消費税をゼロにしたら、税率を10%に戻すときに、再び深刻な消費減に見舞われると、御用学者は言う。その点は正しいが、だったら無期限に消費税率をゼロにすればよいのだ。そんなことをしたら財政破たんすると思われるかもしれないが、そうとも限らない。

 地方消費税を含む消費税全体の税収は28兆円だ。もし消費税率をゼロにすると、その分歳入に穴が開く。そこで、発行される赤字国債を毎年、日銀が全額買い取り、その国債を永久に持ち続けるのだ。国は日銀に国債の金利を支払わないといけないが、支払った金利は、日銀納付金という形で戻ってくるから、国の負担にはならない。こうしたやり方をすると、インフレになってしまうという欠点があるが、日本の場合はそうはならない可能性が高い。

 事実、第2次安倍政権誕生後6年間で、日銀は毎年平均60兆円も国債保有を増やしてきた。ところが、日本経済はまったくインフレにならなかった。60兆円で大丈夫なのだから、28兆円やっても大丈夫だろう。例えば、「インフレ率が3%を超えるまでは、消費税率をゼロに凍結する」というのが、安倍総理の唱える「V字回復」を達成するための正しい景気対策なのだ。

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