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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★グローバル経営者の正体

 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長がレバノンに逃亡した事件で、私は、メディアと裁判所、そして、弁護団の責任が非常に重いと考えている。

 ゴーン被告を日産の救世主として、メディアはもてはやしてきた。2兆円の有利子負債をたった4年で完済したからだ。しかし、日産の経営再建でゴーン被告がやったことは、工場の閉鎖・売却、2万人を超えるリストラ、そして、下請けの半分を切り捨てるというコストカットだった。多くの関係者の人生を無茶苦茶にする一方で、自らは高額の報酬を受け取っていた。表向きの報酬だけで、ゴーン被告が受け取っていたのは、日産7億円、三菱自動車3億円、ルノー9億円と、20億円近いものだった。自分のことしか考えていないというのが、救世主の正体だったのだ。その思想は、今回の逃走にも貫徹している。

 しかし、ゴーン被告の正体を東京地裁は見抜けなかった。1月1日の毎日新聞は、ゴーン被告を保釈すれば、海外に逃亡するという見方が検察内部に根強くあったと報じている。それでも東京地裁が2度にわたって保釈を認めたのは、メディアや海外から突き付けられた「人質司法」との批判を気にしすぎたからだろう。確かに日本では検察の見立てを否認すると、延々と拘留されてしまう悪習があることは事実。しかし、それを改善する構造の問題と現時点での拘留期間をどうするかの判断は別問題だ。

 ゴーン被告の拘留期間は2度の拘留を合わせて130日間。一方、森友学園の理事長だった籠池泰典被告は、10カ月にわたって拘留された。誰がどう考えても、ゴーン被告の方が証拠隠滅の可能性も、逃走の可能性も高いのだから、現時点の制度下でのバランスを図らないといけない。つまり、ゴーン被告を保釈したこと自体が間違いだったのだ。

 もう一つの東京地裁の失敗は、15億円という保釈保証金の低さ。ゴーン被告のこれまでの所得状況をみれば、100億円を超える資産を保有しているのは確実だった。実際、ゴーン被告は15億円を現金で支払っている。例えば、保釈保証金を100億円にしていれば、事態は異なっていただろう。

 さらなる問題は、弁護団の対応だ。ゴーン被告がフランスのパスポートを取り返せたのは、弁護団が在留資格を失ったゴーン被告がパスポートを携帯しないのは違法だと裁判所に申し出たからだ。しかし、若狭勝弁護士を初めとする複数の弁護士は、裁判所の命令という正当行為の下でパスポートの携帯をしないのは、違法ではないと述べている。また、日産自動車がゴーン被告の監視を外したのも、弁護団が人権侵害で刑事告訴すると日産に警告したためだと言われている。それが逃亡の引き金を引いたのだから、弁護団は少なくとも道義的責任から逃れられないだろう。

 今後、レバノン政府がゴーン被告を日本に引き渡す可能性はほぼゼロだ。だから、これから逃亡したゴーン被告にペナルティーを与える唯一の方法は、損害を被った日産がゴーン被告に対して損害賠償請求訴訟を起こすことと、有価証券報告書の虚偽記載などで株価が下落して、損失を被った株主が株主代表訴訟を起こすことだろう。訴訟は、急がないといけない。カリスマ経営者が、資産も逃走させる可能性が高いからだ。

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