プロ野球ドラフト会議で指名を受けることができる選手は、期日前に『プロ志望届』を提出した者に限られている。ひと昔前は進学表明した高校球児を“隠し球”と称して強行指名する乱暴なやり方も見られた。指名後、態度を一変させてプロ入りへ…。当然、指名した球団側の説得があってのことだが、はたから見れば「他球団に指名させないため、進学を隠れみのに使った密約では?」ということになる。
早大進学から態度を一変させた桑田真澄氏(46)が思い出される。その息子である桑田真樹外野手(4年=桜美林大)が期日3日前の10月6日、『プロ志望届』を提出した。失礼ながら、どの球団の指名名簿にも入っていない“無名選手”だ。
「志望届を出すのは本人の勝手」と突き放した言い方をするプロ野球関係者もいるが、実際は違う。スポーツライターの飯山満氏が、大学野球部員の就職状況を教えてくれた。
「チャレンジ精神だけというか、指名の可能性もないのに志望届を出したら、一般論として就職面談先の企業が怒りますよ。『希望球団でなかった場合、そちらにお世話になります』というやり方が許されるのは、一部の有名選手だけ。野球就職できる人数枠は限られており、1人の選手のドラフト待ちで別の選手の合否を保留しなければなりません。今は野球部のある企業も少なくなりましたし…」
ということは、桑田ジュニアは指名の可能性があるのか。
「巨人は野手部門で外野手の補充を予定しています。原辰徳監督は『左バッターが欲しい』と報告しています」(球界関係者)
桑田ジュニアは右投左打の外野手。補強ポイントにマッチするが、4年生になってからレギュラーをつかんだ選手である。
「大半の4年生は就職活動で“幽霊部員”となり、思い出作りで少し試合に出るだけ。プロ入りや野球で就職できそうな一部だけが続けるんです」(飯山氏)
巨人は桑田ジュニアを無視できないという。去る8月26日、巨人二軍は同大学と交流試合を行っている。大学、社会人との交流親善試合はどの球団も積極的だが、巨人は『○○大学連盟選抜チーム』など“選ばれた人材”としか試合をしていない。同大学単独チームと試合を行った理由は、ある意味で“身内”だからだ。
「同大学野球部には桑田ジュニアだけでなく、川相昌弘ヘッドコーチの次男や大森剛・育成部ディレクターの長男も在籍していました」(前出・関係者)
しかも、川相ジュニアは今秋の巨人入団テストを受験し、合格。一般的に合格者は、ドラフト下位か育成枠で指名される。桑田ジュニアは指名されなかった場合、「独立リーグで頑張る」と語っているが、桑田氏も将来の指導者候補の1人。今後の関係を考えれば、放置できない。とすれば…。
密約以上の“無言の圧力”のニオイがする。